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九州の自立を考える会とは|役員名簿から見えてくる福岡県議会の力関係

九州の自立を考える会 蔵内勇夫 原口剣生 中尾正幸 まちと政治
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福岡県議会の正副議長人事をめぐる金銭授受問題では、蔵内勇夫氏、原口剣生氏、中尾正幸氏、松本國寛氏など、自民党県議団の有力者の名前が相次いで報じられました。

さらに、自民党福岡県議団会長を務める松尾統章氏は、2026年7月28日の熊本地震発生直後に政治資金パーティーを開催しました。その後の「やって良かった」という発言にも批判が集まり、8月3日に県議団会長を辞任する意向を表明しています。正式な辞任は、8月7日の県議団議員総会で決まる見通しです。

一見すると、それぞれ別の問題に見えます。

しかし、名前が挙がった県議たちの関係をたどると、県議会や自民党県議団とは別の場所でも接点を持っていたことが分かります。

それが、2011年に設立された政策研究団体「九州の自立を考える会」です。

蔵内氏は設立から約14年間会長を務め、原口氏は副会長から第2代会長へ移りました。松本氏、松尾氏、中尾氏も役員として組織に加わっています。

しかも、この会に参加しているのは自民党県議だけではありません。

福岡県議会の他会派、市町村長、交通・金融・建設関係の企業、医療や農業の業界団体まで、県政に関係する幅広い人物と組織が名を連ねています。

誰が長く役員を務め、どの会派や自治体、企業が同じ組織に集まってきたのかを見ることで、県議会の表面だけでは見えにくい関係の一端が浮かび上がります。

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九州の自立を考える会とは

「九州の自立を考える会」は、地方分権や九州の成長戦略について研究し、政策提言を行う団体です。

会則では、政党の枠を超えた政策合議体の形成、国から地方への権限や財源の移譲、九州の産業振興、防災、アジアとの交流などを研究対象に掲げています。

また、関係団体との連携や会員相互の活動支援も事業として定められています。

事務所は福岡県議会議会棟内に置かれ、年会費は原則3万円。定例総会は年1回開催され、必要に応じて理事会が開かれます。

役員の任期は1年ですが、再任を妨げない仕組みです。

そのなかで蔵内勇夫氏は、2011年の設立から2025年まで、約14年間にわたって会長に選ばれ続けました。

関連記事:蔵内勇夫とは何者なのか

最新の公式役員名簿

九州の自立を考える会が公開している最新の役員名簿は、2025年8月29日現在のものです。

役職氏名
名誉会長蔵内勇夫
会長原口剣生
副会長吉村敏男
理事松本國寛
理事松尾統章
理事新開昌彦
理事椛島德博
理事兼会計責任者中尾正幸

名簿を見ると興味深い構図があります。

蔵内氏は会長を退いた後も名誉会長として残り、副会長だった原口氏が会長へ移っています。

一方、松本氏、松尾氏、中尾氏も役員に入っていました。

つまり、現在の福岡県議会をめぐる一連の問題で名前が挙がった人物たちは、県議会や自民党県議団だけでなく、別の政策団体でも長く接点を持っていたことになります。

会長は蔵内勇夫から原口剣生へ

2025年8月29日の定例総会で、設立以来会長を務めてきた蔵内勇夫氏は会長を退任し、名誉会長に就任しました。

後任には、それまで副会長を務めていた原口剣生氏が選ばれています。

原口氏は2012年に同会の役員へ就任し、蔵内氏の下で地方分権や九州の成長戦略に関する活動を続けてきたと説明しています。

2025年の交代は、組織の中心人物が全面的に入れ替わったというより、

  • 蔵内氏が会長から名誉会長へ
  • 原口氏が副会長から会長へ

と、それぞれ組織内で位置を移した形です。

蔵内氏は組織を離れていません。

原口氏も現在の会長あいさつで、蔵内名誉会長から受けた助言をもとに活動を進めると述べています。

会長は交代しましたが、蔵内氏を中心に形成された人間関係や政策の継続性まで失われたわけではないと考えられます。

関連記事:原口剣生とは何者なのか

2019年と2020年の役員名簿

現在の名簿だけでなく、過去の役員構成を見ると、この会が福岡県議会の各会派や県内の経済界をどのようにつないでいたのかが、さらに分かりやすくなります。

2019年12月2日現在の公式役員名簿は、次のとおりです。

役職氏名当時の所属・肩書
会長蔵内勇夫日本獣医師会会長、自民党福岡県議団相談役
副会長原口剣生福岡県議、自民党福岡県連会長
副会長吉村敏男国民民主党県議団顧問
理事松本國寛自民党福岡県議団会長
理事森下博司公明党福岡県議団団長
理事井上忠敏緑友会福岡県議団会長
理事唐池恒二JR九州代表取締役会長
理事井本宗司大野城市長
理事林裕二朝倉市長
理事兼会計責任者松尾統章福岡県議、自民党福岡県連幹事長
監事岩元一儀民主県政クラブ県議団会長

2020年12月2日の名簿も、役員の顔ぶれは同じです。

主な変化は、吉村敏男氏の所属表記が「国民民主党県議団顧問」から「立憲民主党福岡県連顧問」に変わったことでした。

ここで注目したいのは、単に複数の県議が役員になっていたことではありません。

当時の役員には、

  • 自民党福岡県議団会長
  • 自民党福岡県連会長
  • 自民党福岡県連幹事長
  • 公明党福岡県議団団長
  • 緑友会福岡県議団会長
  • 民主県政クラブ県議団会長
  • 非自民系の県議
  • 市長
  • JR九州会長

が並んでいました。

県議会では別々の会派に所属し、ときには対立する立場にある人物が、九州の自立を考える会では同じ役員会に入っていたのです。

松尾統章氏は長く実務を担ってきた

2019年と2020年の名簿で、松尾統章氏は理事兼会計責任者を務めています。

松尾氏は名簿に名前だけを連ねていたわけではありません。

2019年5月31日に開催されたシンポジウムと臨時総会では、司会進行を担当しています。

公式の活動報告でも、「松尾統章理事兼会計責任者」と明記されています。

また、この臨時総会には、

  • 蔵内勇夫会長
  • 原口剣生副会長
  • 吉村敏男副会長
  • 森下博司理事
  • 井上忠敏理事

などが出席し、役員の選任が承認されました。

松尾氏は2025年8月の役員名簿にも理事として残っています。

つまり松尾氏は、一時的に名簿へ入った人物ではなく、少なくとも2019年から2025年まで、この会の運営に継続して関わってきたことになります。

その松尾氏は2026年7月、熊本県で最大震度7を観測した地震の約1時間半後に、北九州市で政治資金パーティーを開催しました。

当初は「正直、やって良かったと思っています」と説明しましたが、批判を受け、8月3日に自民党福岡県議団会長を辞任する意向を表明しました。議員辞職は否定しています。

この出来事自体と、九州の自立を考える会に直接的な関係があるわけではありません。

しかし、現在の県議会で重要な役職を務めてきた人物が、どのような組織で誰と長く活動してきたのかを確認するうえで、役員名簿は無視できない資料です。

福岡県議会のほぼ全議員が参加していた

設立当初、九州の自立を考える会には、福岡県議会議員のほぼ全員が参加していました。

2012年の福岡県議会広報では、同会を「福岡県議会議員の全員が会員」と紹介しています。

2014年、2015年の県議会資料でも、「福岡県議会の全議員」または「本県議会議員全員」を会員とする団体として扱われていました。

蔵内氏自身も後年、参加した県議について「ほとんど全員でしたが」と説明しています。

自民党県議だけによる団体ではありません。

設立時から、原口氏とともに副会長を務めた吉村敏男氏は非自民系の県議でした。その後も副会長を続け、2025年の役員改選後も同じ役職に残っています。

県議会では与党と野党、複数の会派に分かれていても、この会では同じ会員や役員として活動していたことになります。

地方分権や九州の成長戦略は、会派を問わず参加しやすい政策テーマだったのでしょう。

一方、県議会のほぼ全員が同じ団体に参加すれば、会の外側から活動を検証する県議は少なくなります。

県議会の会派構成だけを見ていると対立しているように見えても、別の組織では同じ会員としてつながっている。

この重なりが、九州の自立を考える会を見る意味の一つです。

市町村長や経済界まで広がる会員

九州の自立を考える会は、県議だけの政策勉強会ではありません。

公開されている会員名簿には、市町村長、企業、業界団体も掲載されています。

久留米市・うきは市選挙区では、原口剣生氏、江口善明氏、井上寛氏、中村香月氏、新井富美子氏の現職県議5人が、いずれも会員となっています。

所属会派は自民党、公明党、新政会、民主県政県議団に分かれていますが、この会では同じ会員です。

筑後地域では、

  • 久留米市 ※現在の久留米市長は、原口剣生氏の弟・原口新五氏です。
  • 大牟田市
  • 柳川市
  • 八女市
  • 筑後市
  • 大川市
  • 小郡市
  • うきは市
  • みやま市
  • 大刀洗町
  • 大木町
  • 広川町

の12市町すべての首長が公開名簿に掲載されています。

企業や団体では、JR九州、西日本鉄道、福岡銀行、西日本シティ銀行、西部ガス、福岡県医師会、福岡県獣医師会、JA福岡中央会、福岡県建設業協会などが参加しています。

福岡県議会、市町村、交通、金融、建設、医療、農業の関係者が、同じ組織の中に集まっているのです。

これは単なる県議有志の研究会という言葉だけでは説明しにくい広がりです。

福岡県や県議会も協力関係を評価

九州の自立を考える会は、福岡県や福岡県議会とも政策面で接点を持ってきました。

2019年5月のシンポジウムは、福岡県議会との共催で開催されています。

当時の栗原渉福岡県議会議長は、同会が地方分権や九州の成長戦略に取り組んできたことを評価し、今後も蔵内会長との連携の下で活動すると説明しました。

福岡県副知事も、観光政策や宿泊税などについて、同会の政策提言や働きかけに謝意を示しています。

2022年の定例総会には服部誠太郎知事も来賓として出席しました。

服部知事は、ワンヘルス、九州全体の観光振興、日田彦山線沿線の地域振興などについて、同会が県政の推進に協力してきたと評価しています。

知事自身は公開会員名簿に掲載されていません。

しかし、知事や副知事、県議会議長が活動を評価し、総会やシンポジウムへ出席してきたことからも、福岡県政との距離が近い団体であることが分かります。

2011年の知事選後に設立

九州の自立を考える会が設立されたのは、2011年9月15日です。

その約5か月前には、福岡県知事選挙が行われていました。

知事選を前に、当時自民党県議団会長だった蔵内勇夫氏は、自民党側の候補として一時名前が挙がりました。

しかし、麻生太郎氏や県内経済界が小川洋氏の支持へ動くなか、蔵内氏は出馬を断念しています。

その後、蔵内氏は「九州の自立を考える会」の代表発起人の一人となり、初代会長に就任しました。

知事選への出馬断念と会の設立に、直接的な因果関係があることを示す資料はありません。

ただし、知事候補への道を断たれた年に、蔵内氏が県議会、市町村、経済界を横断する団体の会長になったという時系列は重要です。

知事として県政の頂点に立つのではなく、県議会、市町村、経済界をつなぐ組織を通じて影響力を広げる別の道が生まれたとも考えられます。

関連記事:麻生太郎と蔵内勇夫の関係はどう変わったのか

地方分権からワンヘルスへ

発足時の主要テーマは、地方分権、道州制、九州の成長戦略でした。

その後、活動には観光振興、日田彦山線の復旧、洋上風力発電などが加わり、近年はワンヘルスが重要なテーマになっています。

ワンヘルスとは、人、動物、環境の健康を一体として考える考え方です。

蔵内氏は日本獣医師会会長などを務め、国内外でワンヘルスを推進してきました。

九州の自立を考える会も、ワンヘルス条例の制定要望、県民講座、セミナーなどを行っています。

2021年の総会で蔵内氏は、同会と知事がワンヘルスを推進していると述べ、条例制定などを会の活動成果として説明しました。

2023年には、ワンヘルスセンターについて、同会が長年取り組んできた地方分権の成果だと位置づけています。

九州の自立を考える会は、設立当初からワンヘルスを目的としていた団体ではありません。

しかし、活動の重点が、長年会長を務めた蔵内氏自身の主要政策へ移っていったことは確認できます。

関連記事:蔵内勇夫氏とワンヘルス関連団体

役員名簿は県議会の力関係を示すのか

役員名簿に名前が並んでいるだけで、個々の人物が同じ政治的立場にあるとは限りません。

また、会への参加だけを根拠に、県議会内の意思決定や個別の問題について、役員同士が連携していたと断定することもできません。

九州の自立を考える会は、公式には地方分権や九州の成長戦略を研究する政策団体です。

ただし、歴代の役員名簿からは、次の事実が確認できます。

蔵内勇夫氏が約14年間会長を務めてきたこと。

原口剣生氏が副会長から後継会長へ移ったこと。

自民党、公明党、非自民系会派の有力県議が、同じ役員会に入っていたこと。

県議会だけでなく、市長やJR九州会長も役員を務めていたこと。

現在の県議会をめぐる問題で名前が挙がった松本國寛氏、松尾統章氏、中尾正幸氏も、同じ組織の役員だったこと。

県議会の議長や会派の役職は、選挙や人事によって変わります。

しかし、九州の自立を考える会では、役員の任期が1年とされながら、同じ人物が長期間にわたって中枢を担ってきました。

その継続性に注目すると、県議会の公式な役職表だけでは見えない、別の関係図が浮かび上がります。

まとめ|九州の自立を考える会から福岡県政を読む

九州の自立を考える会は、地方分権や九州の成長戦略を研究する政策団体です。

一方、その会員と役員の構成を見ると、福岡県議会の複数会派、市町村長、企業、金融機関、業界団体が同じ組織に集まってきたことが分かります。

蔵内勇夫氏は2011年から約14年間会長を務め、現在も名誉会長として残っています。

原口剣生氏は副会長から会長へ移りました。

2019年と2020年には、松本國寛氏が理事、松尾統章氏が理事兼会計責任者を務めていました。

そのほか、公明党や非自民系会派の代表者、JR九州会長、市長なども役員として並んでいます。

役員名簿は、福岡県議会の力関係をそのまま示す答えではありません。

しかし、誰が長く中心にいたのか。

誰が後継者となったのか。

県議会で別会派に分かれる人物が、どこで同じ組織に参加しているのか。

県議会の外にいる首長や経済界と、どのような接点を持っているのか。

こうした点をたどるための、ひとつの配線図にはなります。

福岡県議会の表側で役職が替わっても、その背後で続いてきた人間関係や政策ネットワークは、すぐには消えません。

九州の自立を考える会は、福岡県政に存在する力関係を読み解くための、重要な手がかりなのです。


現在、会長を務める原口剣生氏については、その経歴や県議会での立場を別記事で整理しています。

また、蔵内勇夫氏、原口剣生氏、中尾正幸氏、松本國寛氏らの名前が相次いで登場した福岡県議会の金銭授受問題については、証言や関係人物を時系列で整理しています。

そして、この会を設立から約14年間率いた蔵内勇夫氏が、なぜ福岡県政で長く影響力を持ってきたのかについては、人物記事で経歴や選挙、県議会での役職、国政・獣医師会との関係までまとめています。

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