福岡県議会の問題を追っていると、久留米や筑後という地名が何度も出てきます。
原口剣生県議。
蔵内勇夫県議。
そして、久留米市長の原口新五氏。
県議会の話をしているはずなのに、気づけば久留米市政の話にもつながっていく。ここが、今回の問題を久留米ジャーナルで追う意味でもあります。
では、原口新五とは何者なのでしょうか。
単に「久留米市長」として見るだけでは、輪郭がぼやけます。
原口新五氏を見るには、久留米市議会での経歴、兄である原口剣生県議との関係、そして2016年福岡6区補選から2022年久留米市長選へ続く保守分裂の流れを押さえる必要があります。
原口新五は久留米市長
原口新五氏は、福岡県久留米市の市長です。
原口新五氏は昭和35年4月5日生まれ。
福岡教育大学附属久留米小学校、久留米市立諏訪中学校、柳川商業高校を経て、福岡大学体育学部を中退しています。
政治家としての出発点は、久留米市議会でした。
平成元年11月に久留米市議会議員となり、その後、いったん辞職を挟みながらも、市議として長く活動します。
久留米市議会副議長、久留米市議会議長も務めました。
つまり、原口新五氏は、久留米市議会のなかで長く地盤を築き、市議会の中枢を経験したうえで、市長になった人物です。
市議会議長から市長へ
原口新五氏の経歴で重要なのは、市議会議長を務めている点です。
市議会議員のなかでも、議長は議会の顔です。
議会運営、各会派との関係、市政との距離感を知る立場にあります。
久留米市政を「行政のトップ」として動かす前に、すでに「議会の側」から久留米市政を見てきた人物だということです。
この点では、原口新五氏は典型的な地方議会出身の首長といえます。
地方議会における議長職は、単なる儀礼的な肩書きではありません。議会運営や会派間の調整に関わる重要な立場であり、ときにその人物の政治的な影響力を示す肩書きにもなります。
福岡県議会で議長を務め、筑後地方の県政で強い存在感を示してきた蔵内勇夫氏については、こちらの記事で整理しています。
関連記事:蔵内勇夫氏と福岡県議会での影響力
原口剣生県議と原口新五市長の関係
原口新五氏を見るうえで避けて通れないのが、原口剣生県議との関係です。
原口剣生氏は、福岡県議会議員です。
選挙区は久留米市・うきは市、会派は自民党県議団、当選回数は7回。
原口新五氏は、その原口剣生氏の弟にあたります。
つまり、兄は福岡県議、弟は久留米市長という関係です。
もちろん、兄弟であることと政治的責任が同じであることは別です。原口新五市長本人が、福岡県議会の問題の当事者として報じられているわけではありません。
しかし、久留米市長が原口新五氏であり、久留米市・うきは市選挙区の有力県議が原口剣生氏であるという構図は、久留米の政治を見るうえで無視できません。
市政と県政は制度上は別です。
しかし、道路、河川、防災、農業、産業政策、都市計画など、久留米市だけで完結しない課題は多くあります。
だからこそ、久留米市長と地元選出県議の関係は、市民にとっても関係のない話ではありません。
つまり、原口剣生県議と原口新五市長の関係は、単なる家族関係として見るだけでは足りません。
久留米市・うきは市選挙区の県議。
久留米市長。
兄と弟。
県政と市政。
この四つが重なっているところに、久留米政治の特徴があります。
地方政治では、人物のつながり、選挙区、議会内の力関係が政策にも影響します。もちろん、それだけですべてを説明することはできません。しかし、そこを見ないまま久留米市政だけを切り離して見ると、政治の地図が薄くなります。
原口新五氏を知ることは、久留米市長を知るだけではありません。
久留米市政と福岡県政がどのようにつながっているのかを読み解く入口でもあるのです。
関連記事:原口剣生とは何者なのか
2016年福岡6区補選から続く、保守分裂の前史
原口新五氏が市長になった2022年の久留米市長選を見るとき、忘れてはいけないのが2016年の福岡6区補選です。
この補選は、鳩山邦夫元総務大臣の死去に伴って行われました。
選挙では、鳩山邦夫氏の次男である鳩山二郎氏と、当時の自民党福岡県連会長・蔵内勇夫氏の長男である蔵内謙氏が、ともに無所属で立候補しました。蔵内謙氏は自民党福岡県連の推薦を受けていましたが、自民党本部はどちらかの候補が当選すれば追加公認する方針を取りました。
結果は、鳩山二郎氏の勝利でした。自民党は選挙後、鳩山氏を追加公認しています。
つまり2016年の福岡6区補選では、鳩山家と、蔵内勇夫氏を中心とする県議会側・県連側の構図が正面からぶつかり、鳩山家が勝った形になりました。
この選挙は、久留米を含む福岡6区の保守政治にとって大きな出来事でした。
そして、この構図は2022年の久留米市長選を見るうえでも重要になります。
関連記事:蔵内勇夫はなぜ鳩山二郎に対抗したのか|麻生太郎も絡んだ2016年福岡6区補選
2022年久留米市長選は保守分裂の延長線上にあった
原口新五氏が初当選した2022年の久留米市長選は、無所属新人同士の争いでした。
原口新五氏は無所属の新人、元市議として立候補し、元福岡県議の十中大雅氏、医師の細川博司氏、作曲家の黒岩智行氏を破って初当選しました。
この選挙も、単なる新人同士の市長選ではありませんでした。
毎日新聞は告示前の段階で、久留米市長選について「保守分裂の可能性」と報じています。候補予定者として原口新五氏と、県議会副議長だった十中大雅氏の名前が挙がっていました。
また、十中大雅氏の総決起大会について、公明党関係者の発信では、鳩山二郎衆院議員と公明党の吉田宣弘衆院議員が十中氏を支援すると説明されています。
一方、原口新五氏は無所属新人として当選しました。
ここで見えてくるのは、2016年福岡6区補選から続く保守系のねじれです。
2016年には、鳩山二郎氏と蔵内勇夫の長男・蔵内謙氏がぶつかりました。
2022年には、鳩山二郎氏らが支援する十中大雅氏と、原口剣生県議の弟・原口新五氏がぶつかりました。
もちろん、2022年の久留米市長選を単純に「2016年のリベンジ」と断定することはできません。
しかし、久留米を含む福岡6区の保守政治を見れば、2016年の補選で生まれた鳩山家と県議会側・県連側の対立が、その後の久留米市長選にも影を落としていたと見ることはできます。
原口新五氏の市長就任は、久留米市政だけの出来事ではありませんでした。
それは、鳩山家、県議会、自民党県連、そして久留米の保守系政治が交差するなかで起きた出来事だったのです。
関連記事:2022年久留米市長選候補者まとめ
原口新五市長と自民党の距離
原口新五氏は、2022年の久留米市長選では無所属新人として当選しました。
そのため、原口新五氏を単純に「自民党の市長」とだけ表現すると、2022年時点の選挙の実態とは少しずれます。
しかし、原口新五氏を自民党や保守系政治と切り離して見ることもできません。
兄である原口剣生県議は、自民党県議団に所属する福岡県議です。原口剣生氏は県議会議長を務め、自由民主党県議団会長や自由民主党福岡県支部連合会会長も務めています。
さらに、2026年の久留米市長選では、原口新五氏は自民党などの推薦を受け、無投票で再選しました。
つまり原口新五氏は、2022年には保守分裂のなかで無所属新人として市長になり、その後、現職市長として自民党を含む各党の推薦を受ける立場になった人物と見るのが自然です。
ここに、久留米政治の面白さがあります。
市長選では無所属。
しかし背景には保守系の地盤。
兄は自民党県議団の有力県議。
そして2期目では自民党などの推薦。
原口新五氏を知るには、この複数の層を重ねて見る必要があります。
関連記事:2026年久留米市長選・無投票再選が示した街の現在地
なぜ久留米市政と県政は切り離せないのか
市長は市政を担います。
県議は県政を担います。
国会議員は国政を担います。
制度上は、それぞれ役割が違います。
しかし、現実の地方政治では、市政、県政、国政はきれいに分かれていません。
久留米市の道路や河川、防災、農業、産業政策、都市計画、公共事業、医療や教育の課題は、市だけで完結しないものが多くあります。
とくに久留米は、筑後地方の中心都市です。
県南地域の拠点都市である以上、福岡県との関係、県議会との関係、地元選出国会議員との関係は避けられません。
だからこそ、原口新五市長を見るときには、市長としての経歴だけではなく、原口剣生県議、鳩山家、蔵内家、そして自民党県連をめぐる流れまで見る必要があります。
久留米市政は、久留米市役所の中だけで動いているわけではありません。
福岡県議会問題のなかで原口新五を見る意味
現在、福岡県議会をめぐる問題が大きく報じられています。
そのなかで原口剣生県議の名前が出ている以上、久留米市民としては、原口新五市長との関係も気になるところです。
ただし、ここで大事なのは、短絡的に結びつけることではありません。
原口新五市長本人が、福岡県議会の問題の当事者として報じられているわけではありません。そこは明確に分ける必要があります。
一方で、久留米市長が原口新五氏であり、久留米市・うきは市選出の有力県議が原口剣生氏であるという政治的な構図を、まったく見ないふりをするのも不自然です。
久留米の政治を見るとは、人物の関係を見ることでもあります。
選挙区を見ることでもあります。
市議会、県議会、市長選、衆院選の流れを見ることでもあります。
原口新五氏とは、その中心にいる人物の一人なのです。
まとめ
原口新五氏は、長年の久留米市議会議員経験を持ち、市議会議長を経て久留米市長となった政治家です。
兄は、福岡県議会議員の原口剣生氏です。原口剣生氏は久留米市・うきは市選挙区選出の自民党県議であり、福岡県議会や自民党福岡県連でも重要な役職を務めてきました。
原口新五氏を見るうえで重要なのは、単なる市長プロフィールにとどまらない点です。
2016年の福岡6区補選では、鳩山二郎氏と蔵内謙氏がぶつかる保守分裂が起きました。
2022年の久留米市長選でも、保守系の分裂構図が見えました。
そのなかで、原口新五氏は久留米市長となりました。
もちろん、2022年の市長選を2016年の「リベンジ」と断定することはできません。
しかし、久留米を含む福岡6区の政治を見れば、鳩山家、県議会、蔵内勇夫、自民党県連、久留米市政の流れは、一本の線としてつながって見えてきます。
原口新五とは何者か。
それは、久留米市長であると同時に、久留米政治の保守分裂の系譜を読み解くための重要な入口でもあります。
原口新五氏を理解するうえでは、兄である原口剣生県議の存在も避けて通れません。原口剣生氏の経歴や福岡県議会での位置づけについては、こちらの記事で整理しています。
また、原口新五市長が2期目に入るきっかけとなった久留米市長選の無投票再選については、別記事で詳しくまとめています。
久留米市政や福岡県政をめぐる問題については、久留米ジャーナルの政治・行政関連記事でも継続して整理しています。

