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連載小説

第十二話 文化街の伝説 ミチコ

←第十一話文化街には、夜より古い噂がある。ネオンが滲む路地の奥。二階へ続く細い階段。酒と湿気と、誰かの未練が混じる空気。そこに立っている女がいる。真依と名乗ることもある。だが本当の名は、ミチコ。文化街のミチコ。ずっと前、この街で死んだ女だと...
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第十一話 名前のないカウンター

←第十話ネオンは湿っていた。雨は降っていないのに、路地の空気だけが濡れている。男は真依を探していた。店の名前は覚えている。階段も覚えている。ドアの重さも、笑い声も。だが、確信だけがない。扉を押すと、小さな鈴が鳴った。「いらっしゃい」カウンタ...
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第十話 終わりの予兆

←第九話あの日から二人は、驚くほど自然に続いていた。週に一度は会い、会えない日はメッセージを交わした。夜を越え、朝を並び、ひと月も続いている。(自分は特別だ)そう口には出さないが、胸の奥で何度も確認していた。だが、変化はいつも静かだ。最初は...
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第九話 光の中の二人

←第八話鳥類センターの入り口は、家族連れでゆるく賑わっている。ベビーカー。小さな子ども。鳥の羽音。真依は笑う。「平和だね」その横顔を見ながら、男は思う。昨夜の彼女も真依だった。今、太陽の下で笑っている彼女も真依だ。どちらも嘘ではない。池の水...