筑邦銀行とは何なのか|久留米にあるのに市民に身近でない理由

筑邦銀行とは何なのか 久留米の今
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久留米に本店を置く銀行といえば、筑邦銀行です。

久留米市民なら、名前を知らない人は少ないと思います。市内には本店がありますし、地元企業としての存在感もあります。久留米の銀行、筑後の銀行。そう聞くと、久留米市民の多くが口座を持っていて、日常的にATMを使っている銀行のように思えます。

しかし、実際に暮らしている感覚では、少し違います。

久留米でよく聞く銀行口座といえば、福岡銀行や西日本シティ銀行です。給与振込、家賃、公共料金、ATM利用など、日常生活の中で名前が出やすいのもこの二行です。筑邦銀行は久留米に本店があるのに、一般市民の生活口座としては、意外と身近に感じにくい銀行です。

さらに筑邦銀行について検索すると、「筑邦銀行 やばい」「筑邦銀行 潰れる」といった関連語が出てくることもあります。SBIホールディングスとの資本業務提携解消も全国ニュースになったため、「筑邦銀行は大丈夫なのか」と気になる人もいるかもしれません。

では、筑邦銀行とは何なのでしょうか。

小さな地方銀行なのでしょうか。
それとも、福岡銀行や西日本シティ銀行とは違う役割を持った銀行なのでしょうか。
そして、SBIとの提携解消は、筑邦銀行にとって何を意味するのでしょうか。

この記事では、久留米市民としての素朴な違和感から、筑邦銀行の正体をひもといていきます。

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筑邦銀行は、そもそも誰のために生まれた銀行なのか

筑邦銀行について考えるとき、まず見ておきたいのが創立の理由です。

筑邦銀行の公式サイトの沿革には、創立時の背景がはっきり書かれています。戦後復興期、産業界は多くの資金を必要としていました。しかし、福岡県南部の中小企業は復興資金の調達にも苦しみ、資金繰りが厳しい状態でした。そこで、県南部の商工会議所などを中心に地元銀行設立の機運が高まり、本店を久留米市として設立されたのが筑邦銀行です。

ここに、筑邦銀行の性格がかなり出ています。

筑邦銀行は、もともと「久留米市民の日常口座を広く集めるための銀行」として生まれたわけではありません。出発点にあったのは、福岡県南部の中小企業の資金繰りでした。

つまり、筑邦銀行は最初から、地域の企業を支えるために生まれた銀行だったのです。

この創立理由を知ると、久留米市民が感じる「あまり身近ではない」という違和感も、少し見え方が変わります。筑邦銀行は、市民の財布の中で目立つ銀行というより、地元企業の帳簿や融資の中で存在感を持つ銀行なのではないか。そう考えると、いろいろなことがつながってきます。

なぜ久留米市民には身近に感じにくいのか

久留米に住んでいると、筑邦銀行の名前は知っています。

しかし、自分のメイン口座として使っているかといえば、そうではない人も多いのではないでしょうか。周囲を見ても、福岡銀行や西日本シティ銀行の口座を持っている人の方が多い印象があります。

これは、筑邦銀行が久留米に根づいていないという意味ではありません。

むしろ、根づいている場所が違うのだと思います。

福岡銀行や西日本シティ銀行は、日常生活の中で見えやすい銀行です。給与振込、住宅ローン、公共料金、ATM、アプリ、カード。市民の生活動線に入り込んでいます。

一方、筑邦銀行はもう少し事業者側に近い銀行です。

地元企業の資金繰り、不動産融資、建設業、サービス業、卸売・小売業、事業承継、リース、企業型年金、ビジネスマッチング。そうした、街の表からは見えにくい金融の部分に関わっている銀行です。

つまり、筑邦銀行は「久留米市民の財布の中」に見える銀行ではなく、「久留米の企業の帳簿の中」に見える銀行なのではないでしょうか。

この違いが、身近にあるのに身近に感じにくい理由だと思います。

数字で見ても、中小企業向けの銀行だった

筑邦銀行の性格は、財務資料からも見えてきます。

筑邦銀行のディスクロージャー誌2025(PDF)によると、2025年3月末の貸出金残高は5,726億円です。そのうち中小企業向けは3,666億円で、貸出金全体の64.0%を占めています。一方、個人向けは1,035億円で18.1%です。

これはかなり大きな数字です。

もちろん、筑邦銀行にも個人向けサービスはあります。口座開設もできますし、住宅ローンや資産運用のサービスもあります。しかし、貸出金の中心を見ると、やはり中小企業向けが太い柱になっています。

ここで、創立理由と現在の財務がつながります。

筑邦銀行は、戦後の福岡県南部で中小企業の資金繰りを支えるために生まれました。そして現在も、貸出金の中心は中小企業向けです。

つまり筑邦銀行は、途中から企業向けに寄った銀行ではありません。最初から企業のために生まれ、その性格を今も残している銀行だと見ることができます。

不動産や地元事業者に近い銀行という顔

筑邦銀行の貸出先を見ると、さらにその姿が見えてきます。

2025年版ディスクロージャーでは、業種別貸出の中で、不動産業・物品賃貸業、各種サービス業、建設業、卸売・小売業、地方公共団体などが並んでいます。

これは、街の生活者よりも、街を動かす側に近い取引です。

久留米の不動産、建設、サービス業、商業、自治体、地域企業。そうしたところに資金を流す銀行として筑邦銀行を見ると、日常口座としては見えにくくても、地域経済の中では存在感があることがわかります。

市民がATMで現金を引き出す場面では、筑邦銀行はあまり目立たないかもしれません。

しかし、地元企業が資金を借りる場面、不動産が動く場面、事業者が次の投資を考える場面では、筑邦銀行の名前が出てくる。そういう銀行なのだと思います。

SBIとの提携解消は、なぜ全国ニュースになったのか

筑邦銀行が全国的に注目されたのは、SBIホールディングスとの資本業務提携を解消したためです。

SBIホールディングスは2025年12月24日、筑邦銀行との資本業務提携契約を終了すると発表しました。
筑邦銀行は2020年1月にSBIグループと資本業務提携を結んでいました。これはSBIが進めてきた地方銀行との連携、いわゆる「第4のメガバンク構想」の一部としても見られていました。

そのため、筑邦銀行の離脱は全国ニュースになりました。

外から見ると、こう思うかもしれません。

地方銀行がSBIとの提携を解消して大丈夫なのか。
SBIの力を借りないと厳しかったのではないか。
なぜ、筑邦銀行は離脱したのか。

しかし、筑邦銀行のもともとの性格を見ていくと、このニュースは少し違って見えてきます。

筑邦銀行の本丸は、個人口座を大量に集めることではありません。ネット証券や投資信託を広く個人に売ることだけでもありません。

本丸は、久留米・筑後の中小企業、地元事業者、不動産、地域経済との関係性です。

そう考えると、SBIとの提携解消は「筑邦銀行が困った」という話だけではなく、「自分たちの土俵に合う形へ戻した」とも読めます。

筑邦銀行に必要だったのは、SBIそのものではなく機能だったのではないか

SBIとの提携には、もちろん意味がありました。

ネット金融、証券、投資信託、保険、アプリ、DX、企業型DCなど、SBIグループには地方銀行が自前で持ちにくい機能があります。筑邦銀行にとっても、それらの機能は便利だったはずです。

ただし、それは筑邦銀行の本体そのものではありません。

筑邦銀行にとって必要だったのは、SBIという大きな旗ではなく、地元の顧客に提案できる金融商品だったのではないでしょうか。

この見方は、提携解消後の動きからも見えてきます。

筑邦銀行はSBIとの関係を解消したあと、金融商品仲介の部分では岡三証券との提携へ移っています。2026年には、SBIグループとの共同店舗から切り替える形で、岡三証券と連携した「ちくぎんインベストメントプラザ」を開設すると報じられています。

つまり、筑邦銀行は資産運用サービスをやめたわけではありません。

必要な機能は残す。
ただし、相手を選び直す。
銀行の軸は、久留米・筑後に置く。

こう見ると、SBIとの提携解消は、筑邦銀行の弱さではなく、独自性の表れにも見えてきます。

筑邦銀行はやばいのか、潰れる可能性はあるのか

筑邦銀行について検索すると、「筑邦銀行 やばい」「筑邦銀行 潰れる」といった関連語が出てくることがあります。地方銀行全体に将来不安が語られやすい時代なので、久留米に本店を置く筑邦銀行についても、そうした不安を持つ人がいるのかもしれません。

しかし、少なくとも公表されている数字を見る限り、「すぐに危ない銀行」と見る材料は多くありません。筑邦銀行の公式概要では、2025年9月30日時点の自己資本比率は8.63%です。国内基準行に求められる水準を上回っています。

また、SBIとの資本業務提携を解消したことも、「筑邦銀行が危ないから切られた」と単純に見るより、筑邦銀行の事業の本丸とSBI側の構想が必ずしも一致しなかったと見る方が自然です。

筑邦銀行は、一般市民の生活口座としては目立ちにくい銀行です。そのため、久留米市民から見ても「あまり使っている人を知らない」「ATMをあまり見ない」という印象を持たれやすい。しかし、それは直ちに経営不安を意味するものではありません。

むしろ筑邦銀行の中心は、久留米・筑後の中小企業向け貸出や不動産、地域事業者との取引にあります。市民の財布の中では見えにくいが、企業の帳簿の中では見えてくる銀行。そう考えると、「身近ではない=やばい」とは言えません。

もちろん、地方銀行を取り巻く環境は楽ではありません。人口減少、地域企業の後継者不足、ネット銀行の拡大、地銀再編の流れはあります。しかし、筑邦銀行の場合は、福岡銀行や西日本シティ銀行と同じ生活口座競争で負けている銀行というより、もともと福岡県南部の中小企業金融を支えるために生まれた銀行です。

つまり、筑邦銀行を見るときは、「市民に身近かどうか」だけで判断すると見誤ります。筑邦銀行は目立たない銀行ではありますが、目立たない場所で役割を持っている銀行なのです。

筑邦銀行は「小さな福岡銀行」ではない

筑邦銀行を、福岡銀行や西日本シティ銀行の小型版として見ると、少しわかりにくくなります。

福岡銀行や西日本シティ銀行は、福岡県内で生活口座として広く使われている銀行です。ATMも多く、日常生活の中で名前を聞く機会も多いです。

しかし、筑邦銀行は同じ土俵で戦っている銀行ではないように見えます。

筑邦銀行は、福岡県全体を面で押さえる銀行というより、久留米・筑後の地域経済に深く入る銀行です。市民生活の表側では目立ちにくいけれど、企業の資金繰りや不動産、地域事業者の活動の中では存在感を持つ銀行です。

だから、久留米にあるのに市民に身近ではない。

これは矛盾ではありません。
役割が違うだけなのです。

市民の財布に見える銀行。
企業の帳簿に見える銀行。
同じ地元銀行でも、見えている場所が違います。

筑邦銀行は、後者に近い銀行なのだと思います。

まとめ|筑邦銀行は久留米の企業金融から生まれた銀行だった

筑邦銀行とは何なのか。

久留米市民として見ると、名前は知っているのに、日常口座としてはそこまで身近ではない銀行です。ATMの数でも、生活口座の印象でも、福岡銀行や西日本シティ銀行の方が目立ちます。

しかし、それは筑邦銀行が久留米に根づいていないという意味ではありません。

筑邦銀行は、もともと福岡県南部の中小企業の資金繰りを支えるために生まれた銀行です。現在の貸出金を見ても、中小企業向けが大きな割合を占めています。つまり、創立の理由と現在の姿がつながっているのです。

だから、筑邦銀行は「久留米市民みんなの生活口座」というより、「久留米・筑後の企業金融を支える銀行」と見る方がわかりやすいと思います。

SBIとの提携解消も、その延長で見ることができます。

筑邦銀行に必要だったのは、SBIという大きな構想そのものではなく、地元企業や顧客に提案できる金融サービスだったのではないか。必要な機能は外部から取り入れる。しかし、銀行の軸は久留米・筑後に置く。

そう考えると、筑邦銀行の姿はかなりはっきりします。

筑邦銀行は、福岡銀行や西日本シティ銀行の小型版ではありません。
市民の財布の中で目立つ銀行ではなく、地元企業の帳簿や融資の中で見えてくる銀行です。

久留米にあるのに、久留米市民には少し見えにくい。
けれど、街を支える資金の流れをたどると、その名前が出てくる。

筑邦銀行とは、そういう銀行なのだと思います。

筑邦銀行は企業向け金融の色が強い銀行ですが、私たちが普段使っている銀行口座にも、意外と知らない仕組みがあります。

西日本シティ銀行の自動融資については、こちらの記事でまとめています。

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