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筑後平野を舞台に、ワンヘルスの理念を描く劇場用映画の計画が進んでいます。
現在の作品名は『ONE いのちめぐる物語』です。2026年6月に『ワンヘルスワンライフ(仮)』として製作発表されましたが、福岡県のワンヘルス政策に批判が集まるなか、8月に改題されました。
地域キャストの公開オーディションはすでに終了し、選考結果も応募者へ通知されています。公式サイトでは、2026年秋から2027年春までのうち約20日間撮影し、2027年秋以降に公開する予定としています。
したがって、2026年10月11日現在、「撮影する計画は動いている」とみてよいでしょう。ただし、撮影開始を知らせる発表は確認できず、出演する「著名な俳優陣」の氏名もまだ公表されていません。
この記事では、映画の内容、改題の経緯、現在の進捗、福岡県や筑後市、みやま市との関係、制作に関わる団体を公開情報から整理します。
『ONE いのちめぐる物語』の概要
公表されている作品概要は次のとおりです。
| 項目 | 公表内容 |
|---|---|
| 現在の作品名 | 『ONE いのちめぐる物語』 |
| 旧仮題 | 『ワンヘルスワンライフ(仮)』 |
| 舞台 | 福岡県筑後地方・筑後平野 |
| 監督 | 瀬木直貴氏 |
| 脚本 | 杉山嘉一氏 |
| プロデューサー | 芝田良倫氏、白川雄也氏ほか |
| 製作 | 映画『ONE いのちめぐる物語』製作・上映実行委員会 |
| 実行委員長 | 山村曜子氏 |
| 出演 | 「著名な俳優陣」と公開オーディションで選ばれた地域キャスト |
| 撮影予定 | 2026年秋~2027年春のうち約20日間 |
| 公開予定 | 2027年秋以降 |
| 後援 | 福岡県、筑後市、みやま市ほか申請中 |
監督の瀬木直貴氏は、2019年公開の『いのちスケッチ(Prime Video)』で大牟田市動物園を描き、2025年公開の『オオムタアツシの青春(Prime Video)』でも大牟田市を舞台にしました。今回も筑後地方で地域キャストを募り、地元参加型で映画を制作する形です。
どのような物語なのか
主人公は江崎菫、26歳です。
7歳のときに母が家を出て家族が離散。東京へ出た菫は若くして病気になり、妹の櫻が暮らす筑後平野の田園都市へ戻ります。
そこで出会うのが、農業に携わる青年、獣医師、そして2頭の捨て犬です。菫は人や動物との関わりを通じて穏やかな暮らしを取り戻そうとしますが、青年が動物の殺処分に関わっていること、自分を捨てた母が隣町に住んでいることを知ります。
公式サイトでは、物語を「親に棄てられた姉妹」と「2匹の捨て犬」の出会いとして紹介しています。人、動物、地域とのつながりを通じ、孤独から連帯へ、憎しみから共感へと向かう物語です。
瀬木監督は、親に捨てられた姉妹の実話をもとに、当事者の了承を得て映画化を進めていると説明しています。
2026年6月、服部知事への報告から始まった
映画が公に発表されたのは2026年6月です。
福岡県は6月23日、「ワンヘルスムービープロジェクト始動」と題する記者発表資料を公開しました。6月30日には、瀬木監督と製作・上映実行委員会の関係者が県庁を訪れ、服部誠太郎知事に製作決定と公開オーディションの開催を報告しています。
県庁を訪れたのは、瀬木監督のほか、実行委員長の山村曜子氏、副委員長の高橋啓治氏と吉開ひとみ氏、筑後市の西田正治市長、みやま市の松嶋盛人市長です。
服部知事は、映像の力によってワンヘルスの必要性が伝わる機会になるとの期待を示しました。
当時、瀬木監督は県政をめぐる問題を認識したうえで、公開時に『ワンヘルスワンライフ』から別の題名へ変わらないよう、県民に応援してほしいと語っていました。
しかし、その願いとは逆に、映画は約1か月半後に改題されます。
なぜ『ワンヘルスワンライフ』から改題したのか
2026年8月、作品名は『ワンヘルスワンライフ(仮)』から『ONE いのちめぐる物語』へ変更されました。
背景にあったのは、福岡県のワンヘルス政策に対する批判です。
県議会の海外視察問題や金銭授受疑惑をきっかけに、ワンヘルス関連予算、筑後広域公園のモニュメント、みやま市のワンヘルスセンターなどにも県民の関心が広がりました。服部知事は未着手事業の凍結とゼロベースでの見直しを表明しています。
報道によると、瀬木監督は「ワンヘルス」という言葉が「良くないイメージに染まった」として改題を決めました。
映画の内容からワンヘルスの理念を外したわけではありません。作品名から「ワンヘルス」を外し、「ONE」という語を残した形です。
福岡県の政策見直しで、何が凍結され、何が中止され、何が継続しているのかは別の記事で整理しています。
公費で作る映画ではないのか
瀬木監督は2026年7月の取材に対し、この映画について、公費の助成を受けるものではなく、福岡県の政策とも別であり、ワンヘルスの理念に基づいて市民参加で制作すると説明しています。
福岡県の公表資料にも、映画への補助額や委託額は記載されていません。公開情報から映画への公費支出は確認できません。
一方で、県や市と無関係な企画というわけでもありません。
福岡県は知事表敬と製作発表を記者発表資料で告知し、作品概要も県のホームページに掲載しました。服部知事、筑後市長、みやま市長が製作発表に参加し、福岡県、筑後市、みやま市は後援として記載されています。
つまり、現時点の関係は次のように整理できます。
- 映画は行政からの委託事業ではなく、実行委員会による自主制作です
- 公表資料では、県や市からの製作費助成は確認できません
- 福岡県、筑後市、みやま市は後援し、広報面でも協力しています
ただし、映画の総製作費、協賛企業、協賛金、出資者、資金調達の方法は公表されていません。「公費助成を受けていない」ことと、「誰が、いくら負担しているのかが明らかになっている」ことは別です。
公開オーディションは終了している
地域キャストの公開オーディションは、2026年8月22日、23日、29日に筑後市の九州芸文館で行われました。
年齢や演技経験は不問で、参加費は無料でした。ただし、オーディションと撮影にかかる交通費は自己負担で、出演料も支給しない条件でした。
公式サイトでは現在、応募受付を終了し、判定結果をメールで通知したと案内しています。
このため、映画は製作発表だけで止まっているわけではありません。少なくとも、地域キャストを選ぶ段階までは進んでいます。
「著名な俳優陣」とは誰なのか
県が6月に公開した作品概要と現在の公式サイトは、出演者について「著名な俳優陣に、公開オーディションで選出される地域キャストを交えて構成」としています。
しかし、俳優名は記載されていません。
6月の当初計画では、メインキャストと地域キャストを9月下旬に発表する予定でした。2026年10月11日時点で、公式募集サイトは地域キャストへの結果通知を伝えているものの、メインキャストの氏名は掲載していません。
現段階で特定の俳優名を予想する材料はありません。「著名な俳優陣」が誰を指すのかは、正式発表を待つ必要があります。
撮影時期は当初計画より幅が広がった
6月の作品概要では、2026年10月中旬から11月下旬まで現地撮影を行い、2027年3月に追加撮影、5月下旬に完成試写、同年秋に全国公開する日程が示されていました。
一方、現在の公式サイトは、撮影を「2026年秋~2027年春のうち約20日間」、公開を「2027年秋以降」としています。
| 2026年6月の計画 | 2026年10月時点の公式サイト |
|---|---|
| 9月下旬にメイン・地域キャスト発表 | 地域キャストへ結果通知済み。氏名の掲載なし |
| 10月中旬~11月下旬に約4週間撮影 | 2026年秋~2027年春のうち約20日間 |
| 2027年3月に追加撮影 | 個別の記載なし |
| 2027年5月下旬に完成・初号試写 | 個別の記載なし |
| 2027年秋に全国ロードショー | 2027年秋以降に公開 |
約4週間と約20日間は、実働日数として大きく矛盾するものではありません。ただ、撮影時期と公開時期の表現は当初より幅を持たせたものに変わっています。
現時点で言えるのは、撮影計画は残っているということです。撮影が始まったことや、予定どおり完成することまで確認できたわけではありません。
映画を作るのは誰か
映画の製作主体として記載されているのは、『ONE いのちめぐる物語』製作・上映実行委員会です。委員長は山村曜子氏です。
6月の県資料では、名称が「ワンヘルスムービープロジェクト製作・上映実行委員会」とされていました。作品の改題後、実行委員会の表記も現在の作品名に合わせて変わっています。
一方、公式サイトの末尾には「©2026 (一社)ワンヘルス・ワンライフ」と表示されています。
実行委員会と一般社団法人の役割分担、映画の製作費を管理する主体、興行収入や権利の帰属については、公表資料では確認できません。
プロデューサー・芝田良倫氏とワン・ヘルス・クリエイツ
県が6月に公表した作品概要には、プロデューサーとして芝田良倫氏と白川雄也氏らの名前があります。
芝田氏は、一般社団法人ワン・ヘルス・クリエイツの理事長として、福岡県内の学校で講演やワンヘルス教育に関わってきた人物です。同法人は、福岡県が約730万円をかけて制作した幼児向け絵本の制作チームにも参加しました。
5ページの幼児向け絵本に約730万円を投じたワンヘルス教育事業と制作体制については、別の記事で詳しく検証しています。
ワン・ヘルス・クリエイツは絵本完成後の2026年に解散しています。
その前後に、映画公式サイトの運営に関わる一般社団法人ワンヘルス・ワンライフが動き始めました。同法人は2026年5月14日、「一般社団法人良縁」から現在の名称へ変更し、福岡市東区から筑後市大字津島503番地3へ移転しています。
この住所は、ワン・ヘルス・クリエイツと同じです。映画のオーディション事務局が使用した電話番号0942-48-1489も、福岡県がワン・ヘルス・クリエイツの連絡先として掲載している番号と一致します。
| 項目 | ワン・ヘルス・クリエイツ | ワンヘルス・ワンライフ |
|---|---|---|
| 法人番号 | 3290005017735 | 5290005018021 |
| 所在地 | 筑後市大字津島503番地3 | 筑後市大字津島503番地3 |
| 電話番号 | 0942-48-1489 | 映画事務局が同じ番号を使用 |
| 主な確認事項 | ワンヘルス教育、絵本制作チーム、2026年に解散 | 2026年5月に改称・移転、映画公式サイトに法人名を表示 |
さらに、旧法人の理事長だった芝田氏が映画のプロデューサーに名を連ねています。
別法人でありながら、所在地、電話番号、名称、関係人物、活動分野が重なっています。活動に人的・実務的な連続性があると考える材料はあります。
ただし、両法人は法人番号が異なります。ワン・ヘルス・クリエイツの事業をワンヘルス・ワンライフが正式に承継したと説明する公表資料は確認できません。
映画は本当に撮影されるのか
2026年10月11日時点で、映画の中止を示す発表はありません。
公式サイトも公開されたままで、オーディションは終了し、結果通知まで行われています。撮影時期も2026年秋から2027年春の予定として掲げられています。その意味では、製作計画は現在も進行中です。
一方、まだ確認できない情報も少なくありません。
- 撮影開始の正式発表
- メインキャストの氏名
- 総製作費と資金調達の内訳
- 実行委員会と一般社団法人の役割分担
- 配給会社と具体的な公開館
映画製作では、企画発表やオーディションの後に日程や資金計画が変わることがあります。現段階で「中止になる」と決めつける根拠はありませんが、2027年秋以降の劇場公開まで確定したとみなす段階でもありません。
注目すべき次の節目は、メインキャストの発表ではなく、実際の撮影開始です。
まとめ
『ONE いのちめぐる物語』は、筑後平野を舞台に、人と動物、地域のつながりを描く劇場用長編映画です。監督は瀬木直貴氏、脚本は杉山嘉一氏。2027年秋以降の公開を予定しています。
当初の作品名は『ワンヘルスワンライフ(仮)』でしたが、福岡県のワンヘルス政策に批判が集まるなか、『ONE いのちめぐる物語』へ改題されました。
映画は公費助成を受けない自主制作と説明されています。一方、福岡県、筑後市、みやま市は後援し、県庁での製作発表や自治体による広報も行われました。
制作の周辺には、ワンヘルス絵本を作成したり、県のワンヘルス教育に関わってきた芝田良倫氏とワン・ヘルス・クリエイツがあります。旧法人は解散しましたが、同じ住所と電話番号を使う別法人のワンヘルス・ワンライフが映画公式サイトに表示されています。
オーディション終了をもって「映画が完成する」とは言えません。ただ、製作発表だけで消えた企画でもありません。
今後、撮影開始、出演者、資金、公開時期について新しい発表があれば、この記事に追記します。


