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福岡県議会の新議長に大島道人氏|39対39、最後はくじ引きで決着

福岡県議会議長選2026 まちと政治

福岡県議会は2026年9月9日、蔵内勇夫前議長の辞職に伴う議長選挙を行い、自民党県議団の大島道人氏を第75代議長に選びました。

ただし、大島氏が投票で新開昌彦氏を上回ったわけではありません。

投票した県議は85人。大島氏と新開氏が39票ずつで並び、最後は2人によるくじ引きで大島氏に決まりました。福地幸子氏に1票が入り、無効票は6票でした。

自民党県議団は38人です。最大会派であっても、自民党だけでは後任議長を決められませんでした。一方、公明党や旧民主系などの非自民5会派は、開会直前に新開氏へ一本化し、自民党候補と同数まで持ち込みました。

議長の座は自民党が守りました。しかし、得票では勝者を決められなかったのです。

この記事では、39対39になった票の構造と、大島道人氏、新開昌彦氏、坪田晋氏が蔵内氏と持つ接点から、議長選が福岡県議会の何を変えたのかを考えます。

※本記事は9月6日に公開した議長選の事前記事へ、9月9日の投票結果と大島新議長の所信を加えて再構成しています。

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39対39、くじ引きで大島道人氏が第75代議長に

議長選の結果は次の通りです。

投票先得票・票数結果
大島道人氏39票くじ引きで当選
新開昌彦氏39票くじ引きで落選
福地幸子氏1票-
無効6票-
合計85票-

大島氏と新開氏はいずれも当選に必要な得票数を満たしたうえで、最多得票が同数になりました。この場合、再投票ではなく、地方自治法に基づいて公職選挙法の規定を準用し、くじで当選者を決めます。

議事を進行した板橋聡副議長の説明によると、福岡県議会の正副議長選挙が同数となり、くじ引きが行われたのは昭和34年以来、67年ぶりです。

福岡県議会の歴代議長一覧にも、大島氏が2026年9月9日付で第75代議長に就任したことが掲載されています。

当初の三つどもえが、開会直前に一騎打ちへ変わった

議長選を巡っては、当初三つの投票軸がありました。

  • 自民党県議団は大島道人氏
  • 公明党県議団は新開昌彦氏
  • 県政PLUS県議団は坪田晋氏

しかし、9月9日の開会直前まで行われた協議で状況が変わります。

公明党、県政PLUS県議団、県民の声ふくおか、新政会、国民民主党県議団の非自民5会派が、新開氏を統一候補として支援することで合意しました。県政PLUSは坪田氏への投票方針を変更し、議長選は大島氏と新開氏の一騎打ちになりました。

報道によると、坪田氏は「統一候補を出して、議会改革を進めていく」ことで一致したと説明しています。

旧民主県政県議団が10人、8人、2人に分かれた直後でありながら、三つの新会派は議長選では同じ候補を支援しました。会派分裂の経緯については、「民主県政県議団はなぜ崩壊したのか」で整理しています。

自民38人、非自民5会派36人から39対39へ

選挙前に公表された会派の方針と所属人数を並べると、票の動きが見えやすくなります。

支持候補支持を表明した会派基礎票
大島道人氏自民党県議団38票
新開昌彦氏公明党、県政PLUS県議団、県民の声ふくおか、新政会、国民民主党県議団36票

実際の得票は、両氏とも39票でした。

会派所属の全議員が方針通りに投票したと仮定すれば、大島氏は自民党県議団の人数より1票多く、新開氏は支持を表明した5会派の合計より3票多く得た計算になります。

ただし、議長選は秘密投票です。自民党県議団の38人全員が大島氏へ投票したのか、非自民5会派の36人全員が新開氏へ投票したのかは確認できません。会派内部から別の投票先へ動いた票と、外部から加わった票が相殺されている可能性もあります。

したがって、特定の県議を「造反した」「新開氏へ投票した」などと名指しすることはできません。福地氏への1票を誰が投じたのか、6票がなぜ無効になったのかも、開票結果だけでは分かりません。

確実に言えるのは、自民党県議団の候補が単独では過半数に届かず、非自民側が候補を一本化したことで、得票が完全に並んだということです。

大島道人氏|蔵内氏を「尊敬する1人」と語った後任議長

大島道人氏は田川郡選出の4期目で、旧金田町長や福智町議会議長を務めた後、福岡県議になりました。

蔵内氏との関係で確認できるのは、同じ自民党の組織に属してきたことです。自民党福岡県支部連合会の役員名簿では、蔵内氏は常任相談役、大島氏は衆議院第11選挙区支部の副幹事長に名を連ねています。

大島氏は、蔵内氏が長く中心にいた「九州の自立を考える会」の会員でもあります。8月17日の本会議では、蔵内氏に対する辞職勧告決議案の採決を中止する動議に賛成しました。

さらに投票前日の9月8日、TNCの取材に対し、蔵内氏を先任として評価したうえで「尊敬する1人」と明言しています。

所属政党、超党派組織、8月17日の投票行動、本人の発言を重ねると、大島氏は当初名前が挙がった3氏のなかで、蔵内氏との継続性が最も見えやすい人物です。

一方で、大島氏は就任後、金銭授受疑惑への全面協力や海外活動の停止、ワンヘルス事業の検証などを約束しました。

尊敬する前任者が築いた県議会のあり方へ、どこまで踏み込めるのかが問われます。

新開昌彦氏|くじには敗れたが、得票では負けていない

新開昌彦氏は福岡市早良区選出の7期目で、公明党県議団の団長です。

公明党県議団は8月17日、蔵内氏への辞職勧告決議案の採決を中止する動議に反対しました。議長選でも新開氏は政治倫理条例の制定や海外視察の基準づくりを掲げ、非自民5会派の統一候補になりました。

その一方、新開氏は「九州の自立を考える会」の理事です。2023年に、当時会長だった蔵内氏の下で理事に就任しました。同会が公開する2025年8月29日現在の役員名簿では、蔵内氏が名誉会長、新開氏が理事となっています。

つまり、新開氏は蔵内氏との組織的な接点を持ちながら、辞職勧告決議案を巡る対応と議長選では、自民党県議団と異なる側に立ちました。

新開氏はくじ引きで議長になれませんでした。しかし、得票では大島氏に負けていません。非自民会派が候補を一本化すれば、自民党県議団と同数まで持ち込めることを示した39票でした。

坪田晋氏|第三の候補から、非自民一本化の一員へ

坪田晋氏は福岡市博多区選出の1期目で、県政PLUS県議団の代表です。

同会派は当初、坪田氏へ投票する方針でした。しかし、開会直前に新開氏への一本化へ加わりました。坪田氏は議長候補として票を得るのではなく、非自民側を39票まで押し上げる側へ回ったことになります。

県政PLUS県議団は、旧民主県政県議団のうち、8月17日の採決中止動議に賛成した9人と反対した1人で構成されています。坪田氏自身は採決中止に賛成しました。

また、坪田氏も「九州の自立を考える会」の会員です。2025年1月には蔵内氏とともに県議会のハワイ州訪問団へ参加し、ワンヘルスなどに関する交流に加わっています。県議会の海外視察報告書で確認できます。

それでも今回は、自民党県議団の大島氏ではなく、公明党の新開氏へ一本化しました。蔵内氏との接点が、そのまま議長選での投票方針を決めたわけではないことが分かります。

3氏全員が同じ組織にいたが、議長選では二つに分かれた

「九州の自立を考える会」が公開している会員名簿と、2025年8月29日現在の役員名簿には、次のように記載されています。

  • 蔵内勇夫氏:名誉会長
  • 新開昌彦氏:理事
  • 大島道人氏:会員
  • 坪田晋氏:会員

会員名簿と役員名簿に名前が掲載されています。

同じ組織に参加していることだけを根拠に、同じ政治的立場にあると断定することはできません。今回の結果は、まさにそのことを示しました。

大島氏は自民党候補として議長に当選しました。新開氏は非自民5会派の統一候補となり、坪田氏は自身への投票方針を取り下げて新開氏側へ加わりました。

蔵内氏の時代に形成された人間関係や政策ネットワークは残っています。しかし、その関係が一つの指示系統として動いたのではなく、議会改革や自民党主導の議会運営をどう考えるかによって、投票軸は組み替えられました。

同会の構成と県議会の関係は、「九州の自立を考える会とは」で詳しく整理しています。

大島新議長が示した「6つの約束」

大島氏は就任にあたり、議長として取り組む6項目を公表しました。所信全文を整理すると、次の通りです。

項目主な内容
金銭授受疑惑の解明第三者委員会の調査へ全面的に協力し、すでに議員ではない関係者にも協力を求め、結果を公表する
政治倫理条例9月定例会中の制定を目指し、外部委員が調査や審査に関わる仕組みを設ける
議会のあり方議員報酬、定数、選挙区を検討し、議員連盟への補助金を廃止。活動も検証終了まで凍結する
海外活動大島氏の議長任期中は実施せず、新たな基準を策定する
議会と執行部の関係自民党への質問情報の事前共有や、県職員による質問原稿作成などを見直す
ワンヘルス理念は維持しながら、個々の事業の必要性、費用、成果を聖域なく議論する

金銭授受疑惑を調べる議会側と、海外活動などを調べる県側の二つの第三者委員会の違いは、別記事で整理しています。

大島氏が任期中は行わないとした海外活動では、高額な費用だけでなく、随意契約と事後の大幅な増額も問題になってきました。海外視察問題の全体像と、受注した旅行会社の検証も確認する必要があります。

ワンヘルスについても、理念を尊重することと、約200億円の施設や個別事業への支出が妥当だったかを検証することは別です。福岡県が凍結・見合わせ・継続としている事業を、今後、議会がどこまで具体的に審議するのかが焦点になります。

自民党は議長の座を守ったが、従来の選び方は崩れた

福岡県議会では長年、主要会派による事前調整を経て、自民党県議が圧倒的多数で議長に選ばれてきました。しかし、正副議長ポストを巡る金銭授受疑惑によって、根回しによる人事そのものへ厳しい目が向けられました。

今回は候補者が所信を示し、実際の投票で競い、最後まで結果が分からない議長選になりました。

自民党県議団は議長の座を維持しましたが、大島氏の39票は過半数ではありません。新開氏と同数であり、得票では決着をつけられず、法に基づくくじ引きによって当選しました。

大島氏にとって、これは強い信任を得て出発したというより、議会が二つに割れた状態からの出発です。

しかも、大島氏が掲げた6つの約束を実行するには、自らが尊敬すると語った蔵内氏の時代に形成された慣行、海外活動、政策、組織との関係も検証対象にしなければなりません。

約束が本当に実行されるのか。議会にとって不都合な第三者委員会の結果も公表されるのか。海外活動は止まるのか。議員連盟への補助金は廃止されるのか。ワンヘルスの個別事業は数字をもとに審議されるのか。

くじを引いた瞬間ではなく、その後の行動によって、大島氏が蔵内氏の後任にとどまるのか、新しい県議会の議長になれるのかが決まります。

まとめ

2026年9月9日の福岡県議会議長選は、大島道人氏39票、新開昌彦氏39票となり、くじ引きで大島氏が第75代議長に選ばれました。福地幸子氏に1票が入り、無効票は6票でした。

結果から分かるのは、最大会派の自民党県議団38人だけでは議長を決められなくなったことです。非自民5会派は開会直前に新開氏へ一本化し、得票で自民党候補と並びました。

大島氏、新開氏、当初第三の投票軸だった坪田氏は、いずれも「九州の自立を考える会」を通じて蔵内氏と接点を持っています。

それでも議長選では、大島氏を支える側と、新開氏へ一本化する側に分かれました。

会派名だけでも、蔵内氏との関係だけでも、今回の投票は説明できません。蔵内氏の時代にできた関係を残しながら、議会内の投票軸が組み替わり始めた結果が39対39でした。

蔵内氏がなぜ議長だけでなく県議まで辞職したのか、その後に何が残っているのかは、「蔵内勇夫はなぜ議員辞職したのか」で整理しています。

議長選を含む9月9日の本会議は録画でも確認できます。視聴方法は、「福岡県議会をインターネットで見る方法」で案内しています。

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