スポンサーリンク

福岡県ワンヘルスセンターとは|総事業費約200億円、なぜみやま市に建設されるのか

ワンヘルスセンターとは まちと政治

福岡県みやま市で、「ワンヘルスセンター」の整備が進められています。

総事業費は約200億円とされ、2027年度中の供用開始が予定されている大規模な施設です。

しかし、「ワンヘルスセンター」と聞いても、具体的に何をする施設なのか分からない人も多いのではないでしょうか。

また、なぜ建設地としてみやま市が選ばれたのでしょうか。

福岡県では蔵内勇夫氏を中心にワンヘルス政策が長年推進されてきました。一方、国政では林芳正氏が会長を務める自民党ワンヘルス推進議員連盟が設立され、福岡県が進めるワンヘルスセンターへの支援も求められてきました。

さらに、センターが建設されるみやま市を含む地域は、古賀誠氏が長く政治基盤を築き、その後、藤丸敏氏が地盤を引き継いだ地域でもあります。

藤丸氏自身も、自民党ワンヘルス推進議員連盟の役員に名を連ねています。

この記事では、福岡県ワンヘルスセンターとは何なのか、総事業費、国と県の関係、そして、なぜみやま市に建設されることになったのかを整理します。

スポンサーリンク

福岡県ワンヘルスセンターとは

福岡県がみやま市に整備しているワンヘルスセンターは、人の健康、動物の健康、環境の保全を一体的に考える「ワンヘルス」の考え方を実践するための拠点です。

福岡県によると、ワンヘルスセンターでは、人の健康や環境に関する調査・研究を行う「福岡県保健環境研究所」と、動物の保健衛生を扱う「動物保健衛生所」が連携する体制が構築されます。

現在、福岡県保健環境研究所は太宰府市にありますが、施設の老朽化が進み、新興感染症や地球温暖化など新たな課題に対応するための機能拡充にも限界があるとして、みやま市への移転が決まりました。

福岡県は2022年3月に策定した「福岡県ワンヘルス推進行動計画」に基づき、保健環境研究所と動物保健衛生所が連携するワンヘルスセンターの整備を進めています。

つまり、ワンヘルスセンターは単なる啓発施設ではありません。

感染症対策、環境調査、動物衛生、研究、人材育成などを組み合わせた、福岡県の新たな研究・行政拠点となります。

総事業費は約200億円

2025年11月に行われた起工式についての報道では、ワンヘルスセンターの総事業費は約200億円とされています。

敷地は約10万平方メートルに及び、みやま市から無償譲渡を受けた旧保健医療経営大学の跡地が利用されます。

敷地内には、感染症対策などを担う保健環境研究所、家畜や野生動物の衛生業務を行う動物保健衛生所などが整備されるほか、旧大学校舎の一部も活用されます。

さらに、筑後地域の里山や田園を再現した屋外体験ゾーンも整備される計画です。

福岡県の2025年度予算では、保健環境研究所の本体部分の建築工事として約46億3,000万円が計上されています。

また、ワンヘルスの体験学習ゾーンについても約2億円規模の事業費が計上されていることを、服部誠太郎知事が記者会見で説明しています。

総事業費約200億円には、こうした複数の施設整備や関連事業が含まれているとみられます。

約200億円は誰が負担するのか|約181億円を県債で調達

ここで気になるのが、約204億円に上るワンヘルスセンターの整備費を、最終的に誰が負担するのかという点です。

この財源構成について、2026年9月25日の福岡県議会で具体的な数字が明らかになりました。

後藤香織県議が、国庫支出金、一般財源、「ワンヘルスボンド」「グリーンボンド」を含む県債など、それぞれいくらを充当する見込みなのか質問したのに対し、服部誠太郎知事は次のように答弁しています。

保健環境研究所の移転改築には約163億円を見込み、このうち国庫支出金が約11.6億円、県債が約142.5億円、一般財源が約8.4億円です。

また、動物保健衛生所の整備には約41億円を見込み、県債が約38億円、一般財源が約2.5億円とされています。

この答弁で示された数字を合わせると、ワンヘルスセンター整備では約180.5億円、つまり約181億円を県債によって調達する計画となります。総事業費約204億円の9割近くを県債が占めることになります。

ただし、ここで注意が必要なのは、約181億円の県債がすべて「ワンヘルスボンド」だという意味ではないことです。

後藤県議は「ワンヘルスボンド」「グリーンボンド」を含む県債の財源構成を質問しましたが、知事答弁では県債約142.5億円、約38億円という総額が示されたのみで、そのうち何億円がワンヘルスボンドで、何億円がグリーンボンドやその他の県債なのかまでは明らかにされませんでした。

福岡県は2025年5月、全国初となる「福岡県ワンヘルスボンド」を50億円発行しており、この際は主な充当予定事業としてワンヘルスセンター整備34億円を示していました。

さらに2026年8月31日には、5年債50億円、10年債50億円の計100億円のワンヘルスボンドを発行しています。

ただし、この100億円についても全額がワンヘルスセンターに使われるわけではありません。ワンヘルスセンターのほか、保健所や県立高校、林道、漁礁など複数の事業が資金の充当対象となっています。

したがって、

「ワンヘルスセンター約204億円のうち約181億円を県債で調達する」

ことまでは明らかになりましたが、

「その約181億円が、どの種類の県債によって構成されているのか」

については、なお分けて見る必要があります。

ワンヘルスボンドそのものについては、発行額100億円の元本を誰が返済するのか、利払いはいくらになるのか、どの事業への充当が予定されているのかを別記事で詳しく検証しています。

関連記事:福岡県ワンヘルスボンド100億円は誰が返すのか|事業見直し後も残る元本と約21億円の利払い

林芳正氏が会長を務めるワンヘルス推進議員連盟

国政側でワンヘルス政策を推進しているのが、自民党ワンヘルス推進議員連盟です。

会長を務めているのは林芳正氏です。

2024年に開かれた同議員連盟の総会では、関係省庁からワンヘルス施策への対応状況について説明が行われています。

林氏も、国内のワンヘルス体制を整備し、世界に発信していく必要性に言及しています。

福岡県で進められているワンヘルス政策と、国政側のワンヘルス推進議員連盟は無関係ではありません。

福岡県側からは、ワンヘルスセンターをはじめとした施策への支援が国政側に求められてきました。

ワンヘルスセンターへの支援は、この施設だけを単独で国に求めたものではありません。日本獣医師会の要請書では、九州への感染症研究拠点やFAVAワンヘルス福岡オフィスへの支援と一体の政策として示されていました。

要請を受けた自民党議連の役員と、関係省庁へ決議を示すまでの流れは、自民党ワンヘルス推進議員連盟を検証した記事で整理しています。

ここには、日本獣医師会会長としてワンヘルスを推進してきた蔵内勇夫氏の存在もあります。

蔵内勇夫氏とワンヘルスセンター

福岡県のワンヘルス政策を語るうえで、蔵内勇夫氏の存在は外せません。

蔵内氏は福岡県議会議員として県政に長く関わる一方、日本獣医師会会長として全国的にワンヘルスを推進してきました。

日本獣医師会や関係団体から国政側に対して行われてきた要請の中にも、福岡県のワンヘルスセンターへの支援が盛り込まれています。

つまり、ワンヘルスセンターは福岡県だけで完結した政策ではなく、

福岡県政
↓
日本獣医師会
↓
自民党ワンヘルス推進議員連盟
↓
関係省庁

という複数の層にまたがって推進されてきた事業と見ることができます。

ただし、政策への支援要請と、実際の予算措置は分けて考える必要があります。

誰がどの程度センターの建設決定や財源確保に影響を与えたのかについては、公開資料だけから断定することはできません。

蔵内勇夫氏が関係するワンヘルス関連団体については、日本獣医師会やFAVA、福岡ワンヘルス協議会などを含め、こちらの記事で整理しています。

関連記事:蔵内勇夫氏が関係するワンヘルス関連団体一覧

なぜワンヘルスセンターはみやま市なのか

では、なぜ建設場所としてみやま市が選ばれたのでしょうか。

行政上の理由として大きいのは、旧保健医療経営大学の存在です。

保健医療経営大学は閉校することになり、その跡地が新たな公共施設の建設候補地となりました。

みやま市の資料によると、大学用地はもともと市が所有していました。市は大学閉校後の跡地活用について検討を進めていました。

その後、土地は福岡県に無償譲渡され、約10万平方メートルという広大な敷地を活用してワンヘルスセンターが整備されることになりました。

広い大学跡地を一体的に利用できることは、建設地として大きなメリットだったと考えられます。

さらに、みやま市自身もワンヘルス政策に積極的です。

みやま市は自治体として全国初となる「ワンヘルス推進宣言」を行ったとしており、市内の学校でもワンヘルス教育を進めています。

こうした条件を見る限り、みやま市が建設地となったことには一定の行政的な合理性があります。

みやま市は古賀誠氏と藤丸敏氏の出身地でもある

一方、みやま市という場所を政治の面から見ると、別の背景も見えてきます。

みやま市は、元自民党幹事長の古賀誠氏の出身地です。

古賀氏は長年、この地域を含む福岡県南部を政治基盤としてきました。

さらに、古賀氏の引退後、その地盤を引き継いだ藤丸敏氏も、みやま市の出身です。

つまり、ワンヘルスセンターが建設されるみやま市は、古賀誠氏と藤丸敏氏という、福岡県南部の自民党政治を考えるうえで重要な二人の政治家の出身地でもあります。

ここで注目されるのが、藤丸氏とワンヘルス政策の関係です。

藤丸氏は単にワンヘルスセンターが建設される地域を地盤とする国会議員ではなく、自民党ワンヘルス推進議員連盟にも役員として名を連ねています。

ただし、「二人の出身地だからワンヘルスセンターが建設された」と結論付けることはできません。

一方で、総事業費約200億円の大規模施設が建設される土地の政治的背景として、古賀誠氏と藤丸敏氏がともにみやま市出身であることは、事実として押さえておく必要があります。

みやま市という土地の政治的背景をさらに見ると、古賀誠氏と蔵内勇夫氏との接点も見えてきます。

両氏の関係については、福岡6区補選や筑後地方の保守政治の流れを含め、こちらの記事で詳しく整理しています。

関連記事:古賀誠と蔵内勇夫の関係|筑後保守政治に見える県政の力

藤丸敏氏はワンヘルス推進議員連盟の役員

藤丸敏氏は、単にワンヘルスセンターが建設される地域を地盤とする国会議員というだけではありません。

日本獣医師会の資料では、自民党ワンヘルス推進議員連盟に藤丸氏の名前が確認できます。

つまり、

ワンヘルスセンターが建設されるみやま市
↓
古賀誠氏が長く影響力を持った地域
↓
その政治基盤を引き継ぐ藤丸敏氏
↓
藤丸氏自身もワンヘルス推進議員連盟に参加

という関係が存在します。

これは事実として整理しておく必要があります。

ただし、藤丸氏がワンヘルスセンターをみやま市に誘致したことを示す公開資料は、今回確認した範囲では見つかっていません。

したがって、

「藤丸氏の地元だからワンヘルスセンターが建設された」

と結論付けることはできません。

古賀誠氏から藤丸敏氏へ続く地域とワンヘルス政策

ワンヘルスセンターをめぐる関係を整理すると、興味深い構図が浮かびます。

福岡県側では、蔵内勇夫氏が県政と獣医師会の両方でワンヘルスを推進してきました。

国政側では、林芳正氏が自民党ワンヘルス推進議員連盟の会長を務め、関係省庁への働きかけが行われています。

そして、センターが建設されるみやま市は古賀誠氏が長年政治基盤を築いてきた地域であり、その後の地盤を引き継ぐ藤丸敏氏もワンヘルス推進議員連盟に関わっています。

県議会側で、みやま市とワンヘルスセンターをつなぐ位置にいるのが、地元選出の板橋聡県議です。板橋氏はワンヘルス・地方分権等調査特別委員会に所属し、2023年の土地・建物の譲渡と活用協定の締結にも出席しています。

板橋氏の経歴と、蔵内勇夫氏、古賀誠氏、ワンヘルスとの関係については、こちらの記事で詳しく整理しています。

関連記事:福岡県議会副議長・板橋聡とは何者か

もちろん、この人脈だけを根拠にワンヘルスセンターの建設地が政治的に決定されたと考えることはできません。

旧大学跡地という広大な土地が存在したことや、みやま市自身がワンヘルス政策を積極的に推進していることなど、行政上の理由も確認できます。

ただ、総事業費約200億円という大規模な公共事業がどのような経緯で進められ、どのような政治的支援を受けてきたのかを考えるうえでは、こうした関係も無視できません。

その政治的な広がりは、古賀誠氏や麻生太郎氏、林芳正氏との関係だけではありません。高市早苗氏も2013年、蔵内氏の日本獣医師会長就任を激励する会の発起人に名を連ね、その後も獣医師会行事などで接点を持ってきました。

高市氏と蔵内氏の接点や、高市政権の骨太の方針にワンヘルスが盛り込まれた背景については、こちらの記事で整理しています。

関連記事:高市早苗と蔵内勇夫の接点|「頑張れという目で見ていただいた」発言の背景を調べた

約200億円の財源は今後も確認が必要

ワンヘルスセンターについて、現在確認できる最大の疑問は財源です。

総事業費約200億円とされる一方、その全体について国、福岡県、県債などがそれぞれいくら負担するのかは、分かりやすい形では示されていません。

また、ワンヘルス推進議員連盟などを通じてセンターへの支援が国政側に求められてきましたが、その要請が具体的にどの予算措置につながったのかも確認する必要があります。

「支援を要請した」という政治的な動きと、「実際に国からいくら支出されたのか」は別の問題です。

この点については、福岡県の年度別予算や国庫支出金、県債などをさらに追う必要があります。

福岡県以外でワンヘルス条例を制定しているのは徳島県です。徳島県にも「ワンヘルス推進センター」がありますが、新たに建物を整備したものではなく、県庁内に設置された連携・推進組織です。福岡県と徳島県の条例、推進体制、予算を比較すると、同じワンヘルスセンターでも事業の規模と性格が大きく異なることが分かります。

ワンヘルスをめぐる福岡県の事業は、みやま市のワンヘルスセンターだけではありません。

筑後市の筑後広域公園には、ワンヘルスを象徴する大型モニュメントも整備されています。その整備費や設置場所、モニュメントが造られた経緯については、こちらの記事で詳しく整理しています。

関連記事:筑後広域公園のワンヘルスモニュメントとは|約3億円の巨大オブジェを現地調査

最新の動き|工事は継続、名称変更も検討

2026年8月、服部誠太郎知事は福岡県のワンヘルス政策をゼロベースで見直し、未着手の事業を当面凍結する方針を明らかにしました。

一方、すでに建設工事が始まっているワンヘルスセンターについては、工事を継続する考えを示しています。「ワンヘルスセンター」という名称を変更する可能性にも言及しました。

つまり、今回の政策見直しは、約200億円のセンター建設そのものを中止するという意味ではありません。今後は施設の名称だけでなく、ワンヘルスの理念を施設運営へどのように残すのか、当初計画のどこまでを維持するのかが焦点になります。

未着手事業の凍結、2026年度イベントの中止、センター工事の継続など、今回の見直しで何が止まり、何が続くのかはこちらの記事で整理しています。

まとめ|ワンヘルスセンターは何のための200億円なのか

福岡県がみやま市に整備しているワンヘルスセンターは、人、動物、環境に関する研究や感染症対策などを一体的に行う大規模な拠点です。

総事業費は約200億円とされ、2027年度中の供用開始が予定されています。

建設地には、みやま市から無償譲渡された旧保健医療経営大学の広大な跡地が利用されています。

その意味では、みやま市が選ばれたことには行政上の合理性があります。

一方で、福岡県のワンヘルス政策を長年推進してきた蔵内勇夫氏。

国政側の自民党ワンヘルス推進議員連盟、会長を務める林芳正氏、そしてセンターが建設される地域を地盤とする藤丸敏氏という関係もあります。

さらにその土地の政治史をさかのぼれば、古賀誠氏の存在にも行き着きます。

これらの関係だけで、ワンヘルスセンターの建設地や事業そのものが政治的に決められたと断定することはできません。

しかし、約200億円という巨額の事業が、どのような経緯で決まり、誰が支援を求め、最終的に誰が費用を負担しているのか。

ワンヘルスセンターは、福岡県が進める一つの施設整備であると同時に、蔵内勇夫氏が長年関わってきた獣医師会、ワンヘルス政策、国政政治家との関係が交差する事業でもあります。

高市早苗氏も2013年、蔵内氏の日本獣医師会長就任を激励する会の発起人に名を連ね、その後も獣医師会行事などで接点を持ってきました。

さらに、高市政権の骨太の方針にもワンヘルスが盛り込まれています。

国政政治家と蔵内氏のこれまでの接点については、こちらの記事で整理しています。

県民にとって重要なのは、ワンヘルスという理念だけではなく、その具体的な中身です。

ワンヘルスセンターが本当に必要な施設なのかを考えるためにも、まずは約200億円の事業費が何に使われ、その財源がどこから出ているのかを明らかにする必要があるのではないでしょうか。

ワンヘルスセンターは、福岡県が進めてきた政策の一部です。約200億円の施設だけでなく、モニュメント、教育、FAVA、県債、国政への広がりまで含めた全体像は、福岡県のワンヘルスとは何だったのかで整理しています。

タイトルとURLをコピーしました