「久留米市内で子育てするなら、小学校や中学校はどこがいいのか」という質問をされることがあります。
しかし、この問いは意外に難しいものです。
久留米市の公立小中学校は、原則として住所によって通う学校が決まります。つまり、「どの学校を選ぶか」という問題は、実際には「久留米市のどの地域に住むか」という問題でもあります。
また、「学力が高い」「評判がいい」といった話は、客観的に比較できる公的なランキングがあるわけではありません。
そこでこの記事では学校の優劣を決めるのではなく、
子育て世帯の多さ、学校規模、中学校への進学、交通、買い物、公園、防災
といった、実際に住むときに確認できる材料から久留米市の校区を考えてみます。
子育て世帯が多かったのは西国分・南・上津
一つ興味深い資料があります。
久留米市が2019年に、就学前の子どもを育てる市内3,000世帯を無作為抽出して実施した「子育てに関するアンケート調査」です。
1,868世帯から回答があり、居住する小学校区では、
| 校区 | 回答者の割合 |
|---|---|
| 西国分 | 7.0% |
| 南 | 5.8% |
| 上津 | 5.6% |
| 合川 | 5.2% |
| 金丸 | 4.8% |
| 北野 | 4.4% |
となっていました。
もちろん、これは「人気校区ランキング」ではありません。
調査対象は就学前児童の保護者であり、しかも2019年の調査です。
しかし、少なくとも当時、西国分、南、上津、合川には子育て世帯がかなり集まっていたことは分かります。
そして2026年の学校規模を見ると、この4校区は現在も市内では比較的大きな学校を抱えています。
2026年の児童数を見ると、西国分と南が突出している
久留米市教育委員会が2026年9月に公表した資料によると、通常学級の児童数は次のようになっています。
| 小学校 | 主な進学先 | 通常学級 | 児童数 |
|---|---|---|---|
| 西国分小 | 諏訪中 | 32学級 | 989人 |
| 南小 | 牟田山中 | 32学級 | 982人 |
| 上津小 | 青陵中 | 24学級 | 661人 |
| 合川小 | 良山中 | 19学級 | 609人 |
数字は特別支援学級を除く通常学級の児童数です。西国分小と南小は約1,000人で、久留米市内でも突出した大規模校となっています。
一方で、これは「大きな学校だからいい」という意味ではありません。
児童数が多ければ友人関係や学校行事の選択肢が広がる一方、学校が巨大になり、運動場や施設、登下校などに負荷がかかる側面もあります。
西国分小・諏訪中校区 中心部の利便性を重視するなら有力
まず目立つのが、西国分小学校区です。
西国分小学校は2026年度、通常学級だけで989人、32学級あります。
校区は、西鉄久留米駅を中心とした商業施設が近く、福岡市への通勤圏に位置しています。西鉄久留米駅が久留米の中心になった経緯については、西鉄久留米駅はなぜ久留米の中心になったのか|JRではなく“西鉄が街を握った理由”にまとめています。
久留米の都市構造を考えると、西国分校区の強みは分かりやすいでしょう。
学校だけではありません。
西鉄久留米駅を使いやすく、中心市街地にも近い。自動車だけに依存しなくても生活しやすい地域です。
子どもが小さいうちは親が車で送り迎えできます。しかし、子どもが中学生、高校生になると、自分で移動できる公共交通の存在は次第に重要になります。
西国分小からは諏訪中学校へ進む地域が中心となります。
「久留米中心部の生活利便性」と「大規模な学校」を両方求める家庭には、まず検討対象になりやすい校区でしょう。
ただし、大規模校であることをメリットと見るかどうかは家庭によって違います。
南小・牟田山中校区 小学校と中学校が隣り合う巨大な学園地域
西国分と並んで目立つのが南校区です。
2026年度の南小学校は通常学級32学級、児童982人。西国分小とほぼ同じ規模です。
さらに南校区には特徴があります。
南小学校の所在地は「南2丁目16-1」。
牟田山中学校は「南2丁目16-2」。
小学校と中学校がほぼ隣り合っています。
牟田山中学校も大きく、2025年度は1年212人、2年212人、3年200人の計624人でした。
つまり、この地域には小中合わせてかなりの数の子どもが通っています。
小学校から中学校まで生活圏が大きく変わらないことは、住宅地として考えると面白い特徴です。
南小学校自身も「児童数1000人以上の大規模校」であることを前提に学校生活のルールを定めています。
西国分が「中心市街地への近さ」を特徴とするなら、南は学校を中心として形成された大規模な住宅地域という性格がより強く見えてきます。
合川小・良山中校区 買い物、公園、自動車移動とのバランス
少し性格が変わるのが合川校区です。
2026年度の合川小学校は通常学級19学級、児童609人です。
西国分や南ほど巨大ではありませんが、それでも十分な規模があります。
校区には合川町、新合川、東合川などが含まれ、中学校は良山中学校の区域になります。
新合川にはゆめタウン久留米があり、市中心部と郊外の中間的な位置にあります。
つまり合川は、
住宅、商業施設、公園、自動車交通が一つの生活圏にまとまっている地域
と見ることができます。
ただし、自動車が便利な地域だからこその問題もあります。
合川小学校は、校区が広いこと、自動車で児童を送迎する家庭があることに触れたうえで、学校周辺には道幅が狭く車の往来が激しい場所があるとして、送迎車による混雑への注意を呼びかけています。
住宅を選ぶ場合は「合川校区だから」で終わらせず、実際の通学路まで見る必要がある地域でしょう。
上津小・青陵中校区 久留米南部の住宅地として考える
上津校区も子育て世帯の多い地域です。
2019年の市のアンケートでは回答世帯の5.6%が上津校区で、西国分、南に次ぐ数字でした。
2026年度の上津小学校も通常学級24学級、児童661人と、市内では大きな学校です。
中学校は青陵中学校になります。
上津の特徴は、中心部から南へ延びる国道3号を軸とした生活圏です。
上津小学校、青陵中学校、祐誠高校などが集まる一方、国道3号周辺は交通量も多く、市は二軒茶屋南交差点について「多くの生徒や児童が国道3号を利用し通学している」として交通安全対策を進めてきました。
上津には浦山公園もあります。
中心市街地の徒歩・鉄道型の生活というより、自動車を使いながら久留米南部で生活する家庭にとって検討しやすい地域といえそうです。
「人気校区」だけで家を決めてはいけない
ここまで見ると、西国分、南、合川、上津にはそれぞれ違った特徴があります。
しかし、子育て世帯が住宅を選ぶ場合、もう一つ必ず確認しておきたいものがあります。
災害リスクです。
久留米市の内水ハザードマップでは、西国分、南、合川、上津はいずれも対象校区に含まれています。上津については土砂災害リスクも併記されています。
ただし、これは「その校区全体が危険」という意味ではありません。
同じ校区でも、道路一本、土地の高さ数メートルで浸水想定は変わります。
久留米で家を探すなら、
学校区を決める → 物件を探す → 最後にその住所をハザードマップで確認する
という順番が必要でしょう。
特に筑後川を抱える久留米にとって、浸水や冠水は避けて通れません。詳細は、久留米で浸水しやすい町はどこか|過去の水害とハザードマップで注意したいエリアで整理しています。
2032年には西国分も南も700人台になる
もう一つ、長期的には無視できない変化があります。
少子化です。
久留米市教育委員会の2026年度推計では、2032年度の通常学級児童数は、西国分小712人、南小747人、合川小457人、上津小554人になると見込まれています。
現在は約1,000人いる西国分小や南小でさえ、児童数は減っていく予測です。
久留米市ではすでに小規模校の統合も進んでおり、市教育委員会は児童数の将来推計を毎年公表しています。
つまり、いま「子どもが多い校区」であっても、10年後まで同じ姿とは限りません。
これは久留米で住宅を購入する家庭にとって、学校の評判以上に長期的な問題かもしれません。
関連記事:久留米市、小学校統合の対象15校と優先順位を初めて明示
結局、久留米で子育てするならどこがいいのか
「どこが一番いい」と一つの校区を決めることはできません。
しかし、地域の性格はかなり違います。
| 重視するもの | 検討しやすい校区 |
|---|---|
| 西鉄久留米駅、中心部、公共交通 | 西国分 |
| 小中学校を中心とした大規模住宅地 | 南 |
| 買い物、公園、自動車での生活 | 合川 |
| 久留米南部、住宅地、自動車移動 | 上津 |
特に現在の児童数や生活利便性まで含めて考えるなら、西国分と南は久留米の子育て地域を考えるうえで外せない二つの校区です。
一方、合川や上津には、中心部とは違う郊外型の暮らしがあります。
そして重要なのは、学校名だけを見ないことです。
公立学校は、その街から切り離して存在しているわけではありません。
通学路があり、公園があり、スーパーがあり、駅があり、道路があります。
子どもが小学校に通い、中学生になり、高校生になって一人で街を移動する。
そう考えると、「久留米でどの学校がいいのか」という問いは、
「久留米のどこで、子どもと暮らしていくのか」
という問いなのかもしれません。
久留米ジャーナルでは、久留米の街の特徴と住みやすさを整理しています。
また久留米市の小学校の統廃合については、こちらの記事で詳しく整理しています。

