福岡県議会の議長選挙は、2026年9月9日(水)の9月定例会初日に行われます。
蔵内勇夫前議長の辞職を受けた選挙です。自民党県議団は大島道人氏、公明党県議団は新開昌彦氏を候補として決定しました。さらに、旧民主県政県議団から分かれた県政PLUS県議団は、坪田晋氏に投票する方針です。
表面だけを見れば、「自民対公明対旧民主系」の三つどもえに見えます。しかし、3氏はいずれも、蔵内氏が長く中心にいた超党派組織「九州の自立を考える会」の会員です。
今回の議長選を見るうえで重要なのは、会派名だけではありません。候補者が蔵内氏とどのような組織的接点を持ち、蔵内氏を巡る議会の局面でどのような行動を取ったのかです。
福岡県議会議長選挙の日程は9月9日
福岡県議会が公表した9月定例会の会期日程案によると、本会議は9月9日午前11時に開会します。
初日の議事は、開会、議席の指定、会期の決定、諸般の報告に続いて議長選挙となっています。
一般の有権者が投票する選挙ではなく、県議会議員による投票です。首長選挙のような「告示日」があるわけでもありません。本記事でいう「候補」は、会派が選出した人物や投票先として公表した人物を指します。
現時点で見えている三つの投票軸
2026年9月5日時点で明らかになっている動きを整理すると、次の通りです。
| 氏名 | 議長選での位置づけ | 当選回数 | 蔵内氏の辞職勧告決議案を巡る採決中止動議 | 九州の自立を考える会 |
|---|---|---|---|---|
| 大島道人氏 | 自民党県議団が候補に選出 | 4回 | 賛成 | 会員 |
| 新開昌彦氏 | 公明党県議団が候補に選出。新政会も支持 | 7回 | 公明党県議団は反対 | 理事 |
| 坪田晋氏 | 県政PLUS県議団が投票する方針 | 1回 | 賛成 | 会員 |
この表だけでも、単純な「蔵内派対反蔵内派」では整理できないことが分かります。
大島道人氏|自民党内で選ばれた継続性の強い候補
大島道人氏は田川郡選出の4期目で、自民党県議団の議長候補に立候補した唯一の議員です。県議団は9月2日に大島氏を候補として正式に選びました。報道によると、大島氏は「信頼回復に努める」としています。
蔵内氏との関係でまず確認できるのは、同じ自民党の組織に属してきたことです。自民党福岡県支部連合会の役員名簿では、蔵内氏は常任相談役、大島氏は衆議院第11選挙区支部の副幹事長に名を連ねています。
また、大島氏は「九州の自立を考える会」の会員です。8月17日の本会議では、蔵内氏に対する辞職勧告決議案の採決そのものを中止する動議に賛成しました。
所属政党、超党派組織、議会での投票行動という三つの面では、3氏のなかで蔵内氏との継続性が最も見えやすい候補です。
新開昌彦氏|改革を掲げる一方、超党派組織では理事
新開昌彦氏は福岡市早良区選出の7期目で、公明党県議団の団長です。9月4日に立候補を表明し、政治倫理条例の制定や海外視察の基準づくりなどを掲げました。新政会も新開氏を支持する方針です。
8月17日、公明党県議団は、蔵内氏への辞職勧告決議案の採決を中止する動議に反対しました。少なくともこの局面では、自民党県議団や県政PLUS県議団とは異なる行動を取っています。
一方、新開氏は「九州の自立を考える会」の理事です。2023年に、当時会長だった蔵内氏の下で理事に就任しました。同会が公開する2025年8月29日現在の役員名簿では、蔵内氏が名誉会長、新開氏が理事となっています。新開氏を支持する新政会の椛島徳博団長も同会の理事です。
つまり、新開氏は議長選で改革色を打ち出し、辞職勧告決議案を巡っては自民党と異なる判断をしたものの、蔵内氏が築いてきた超党派ネットワークの外側にいた人物ではありません。
「自民党候補ではない」ことと、「蔵内氏との接点がない」ことは別です。
坪田晋氏|新会派の若い代表だが、8月の採決では中止動議に賛成
坪田晋氏は福岡市博多区選出の1期目で、県政PLUS県議団の代表です。西日本新聞の報道では、同会派10人が坪田氏に投票する方針とされています。
ただし、大島氏や新開氏と同じ形で正式な立候補表明が報じられたわけではありません。現段階では「県政PLUSが坪田氏を投票先に決めた」と見るのが正確です。
県政PLUS県議団は、旧民主県政県議団20人のうち、8月17日に採決中止動議へ賛成した9人と反対1人で構成されています。坪田氏自身も賛成者の一人です。会派が新しくなり、1期目の若い代表を投票先に据えたからといって、それだけで蔵内県政との決別を意味するわけではありません。
旧民主県政県議団が10人、8人、2人に分かれた経緯は、「民主県政県議団はなぜ崩壊したのか」で詳しく整理しています。
坪田氏も「九州の自立を考える会」の会員です。さらに、2025年1月の県議会ハワイ州訪問団では、蔵内氏とともに参加し、ワンヘルスなどに関する交流に加わっています。県議会の海外視察報告書で確認できます。
3氏全員が「九州の自立を考える会」に所属
同会が公開している会員名簿と、2025年8月29日現在の役員名簿に記載された立場は、次のようになります。
- 蔵内勇夫氏:名誉会長
- 新開昌彦氏:理事
- 大島道人氏:会員
- 坪田晋氏:会員
「九州の自立を考える会」の会員名簿と役員名簿に掲載されています。
同会は、地方分権などを掲げ、党派を超えた県議や首長らが参加する組織です。所属しているという事実だけで、蔵内氏の指示を受けている、同じ投票行動を取る、と断定することはできません。
それでも、3氏全員が蔵内氏と同じ政治ネットワークに接点を持つことは、今回の議長選を考えるうえで無視できません。議長が交代しても、蔵内氏の時代に形成された人間関係や政策ネットワークまで直ちに消えるわけではないからです。
同会の構成と県議会内の関係については、「九州の自立を考える会とは」も参照してください。
非自民票が割れたままなら大島氏が優位
現在明らかになっている会派単位の投票方針では、自民党県議団が大島氏、公明党県議団と新政会が新開氏、県政PLUS県議団が坪田氏を支持します。
会派の方針通りに票が動き、新開氏と坪田氏に非自民票が分かれたままであれば、最大会派を基盤とする大島氏が優位です。ただし、議長選は県議一人ひとりの投票で決まります。県民の声ふくおかや国民民主党県議団、少数会派、無所属議員の票に加え、会派を越えた票の移動があるかが焦点になります。
当選者の名前だけでなく、3氏がそれぞれ何票を得たのかを見る必要があります。得票数には、自民党県議団の統率力、公明党と新政会の連携、分裂した旧民主系会派の現在地が表れるためです。
新議長に問われるのは「蔵内氏辞職後」をどう処理するか
新議長が最初に向き合うのは、通常の議会運営だけではありません。
蔵内氏の海外視察や政治資金などを巡る問題について、県議会がどこまで事実関係を調べるのか。第三者を交えた調査を行うのか。政治倫理条例や海外視察の基準を整えるのか。ワンヘルス関連事業を議会としてどう検証するのか。いずれも、議会の信頼回復に直結します。
蔵内氏が議員辞職に至った経緯と、その後に残る論点は、「蔵内勇夫はなぜ議員辞職したのか」で整理しています。
まとめ
福岡県議会の議長選挙は、2026年9月9日午前11時開会の本会議で行われる予定です。
現時点では、大島道人氏、新開昌彦氏、坪田晋氏が三つの投票軸になっています。しかし、3氏はいずれも「九州の自立を考える会」を通じて蔵内氏と組織的な接点を持ちます。
その一方で、8月17日の採決中止動議では、大島氏と坪田氏が賛成し、新開氏が率いる公明党県議団は反対しました。組織上の関係と、実際の議会行動は同じではありません。
今回の議長選は、単純に「蔵内氏に近い候補」と「遠い候補」を選ぶ選挙ではなく、蔵内氏の時代にできた関係を、各会派がどのように組み替えるのかを見る選挙です。
本会議はインターネットでも確認できます。視聴方法は、「福岡県議会をインターネットで見る方法」で案内しています。

