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なぜ蔵内勇夫は福岡県政で力を持ったのか|「九州の自立を考える会」という組織

九州の自立を考える会 蔵内勇夫 原口剣生 中尾正幸 久留米の今
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福岡県議会の正副議長人事をめぐる金銭授受問題では、蔵内勇夫議長、原口剣生県議、中尾正幸副議長の名前が挙がっています。

しかし、3人を結んでいるのは、県議会や自民党県議団の役職だけではありません。

3人は長年、「九州の自立を考える会」という政策研究団体でも中枢を担ってきました。

蔵内氏は2011年の設立から約14年間会長を務め、現在は名誉会長。原口氏は蔵内氏の下で役員を務めた後、現在の会長に就任しています。中尾氏も会の理事兼会計責任者です。

さらに、この会には自民党だけでなく、福岡県議会の他会派、市町村長、企業、業界団体などが幅広く参加しています。

「九州の自立を考える会」を見ると、蔵内勇夫氏の力が、県議会の役職だけでは説明できないことが見えてきます。

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蔵内勇夫・原口剣生・中尾正幸を結ぶ組織

2025年8月29日の定例総会で、蔵内勇夫氏は会長を退任して名誉会長に就任しました。

後任の会長には、それまで副会長を務めていた原口剣生氏が選ばれています。現在の会則では、名誉会長を置くことができ、会長と副会長は理事の互選で選出されます。

現在の関係を整理すると、次のようになります。

人物「九州の自立を考える会」での立場
蔵内勇夫初代会長、現名誉会長
原口剣生第2代会長
中尾正幸理事兼会計責任者

原口氏は2012年に同会の役員へ就任し、それ以降、蔵内氏の下で地方分権や九州の成長戦略に関する活動を続けてきたと説明しています。現在も、原口氏は会長、蔵内氏は名誉会長として同じ組織に残っています。

2025年の役員改選は、組織の中枢が大きく入れ替わったというより、原口氏が副会長から会長へ、蔵内氏が会長から名誉会長へと位置を移した形に見えます。

県議会や自民党内の役職とは別に、金銭授受問題で名前が挙がる3人が、長年同じ組織の中心にいたことになります。

関連記事:原口剣生とは何者なのか

「九州の自立を考える会」とは何か

「九州の自立を考える会」は、地方分権や九州の成長戦略を研究し、政策提言を行う団体です。

会則では、政党の枠を超えた政策合議体の形成、国から地方への権限・財源移譲、九州の産業、防災、アジアとの交流などを研究対象に掲げています。

しかし、この会の特徴は政策の内容だけではありません。

会則には「関係諸団体との連携」「会員相互の連携及び活動支援」が事業として明記され、県議、市町村長、企業、業界団体が一つの組織に集まっています。事務所は福岡県議会議会棟内に置かれています。

年会費は原則3万円。定例総会は年1回で、理事会は必要に応じて開催されます。役員の任期は1年ですが、再任を妨げない仕組みです。

つまり、毎年役員を選ぶ仕組みでありながら、蔵内氏は約14年間にわたって会長に選ばれ続けたことになります。

福岡県議会の全議員が参加していた

設立当初、この会には福岡県議会議員のほぼ全員が参加していました。

2012年の福岡県議会広報では、同会を「福岡県議会議員の全員が会員」と紹介しています。2014年、2015年の県議会資料でも、「福岡県議会の全議員」または「本県議会議員全員」を会員とする団体として扱われていました。

蔵内氏自身も後年、福岡県議会議員の有志について「ほとんど全員でしたが」と説明しています。

つまり、自民党県議だけが参加したわけではありません。

与党と野党、会派の違いを超えて、県議会全体に近い規模の議員が、蔵内氏を会長とする同じ団体に参加していたのです。

地方分権や九州の成長戦略は、会派を問わず参加しやすい政策テーマだったのでしょう。

一方で、県議会のほぼ全議員が加入すれば、この会の外側から活動を検証する県議もほとんどいなくなります。

県議会では別会派に分かれていても、別の組織では同じ会員として並ぶ。この構造は、福岡県議会の会派図だけを見ていても分かりません。

市町村長や経済界まで広がる会員

現在の公開会員名簿には、県議だけでなく、多数の市町村長、企業、業界団体が掲載されています。

たとえば、久留米市・うきは市選挙区では、原口剣生氏、江口善明氏、井上寛氏、中村香月氏、新井富美子氏の現職県議5人が、いずれも会員名簿に掲載されています。

所属会派は自民党、公明党、新政会、民主県政県議団に分かれていますが、同会では全員が同じ会員です。

筑後地域では、久留米市、大牟田市、柳川市、八女市、筑後市、大川市、小郡市、うきは市、みやま市、大刀洗町、大木町、広川町の12市町すべての首長が公開名簿に掲載されています。

企業や団体では、JR九州、西日本鉄道、福岡銀行、西日本シティ銀行、西部ガス、福岡県医師会、福岡県獣医師会、JA福岡中央会、福岡県建設業協会などが名を連ねています。

この会は、県議だけの政策勉強会ではありません。

福岡県議会、市町村、交通・金融・建設などの企業、医療・農政関係の業界団体を横断する組織です。

参照元:九州の自立を考える会|会員一覧

服部知事も県政への協力に謝意

服部誠太郎知事は、現在の公開会員名簿には掲載されていません。

しかし、同会との関係がないわけではありません。

2022年の定例総会に来賓として出席した服部知事は、ワンヘルス、九州全体の観光振興、日田彦山線沿線の地域振興などについて、同会が福岡県政の推進に大きく協力してきたとして謝意を示しました。

県議、市町村長、企業、業界団体だけでなく、知事も同会を県政の協力組織として評価していることになります。

会員名簿に知事の名前がないからといって、福岡県政との接点が薄いとはいえません。

2011年知事選の後に設立

「九州の自立を考える会」が設立されたのは、2011年9月15日です。

同年4月には福岡県知事選挙が行われています。

この知事選を前に、当時自民党県議団会長だった蔵内氏は、一時、自民党の知事候補として名前が挙がりました。しかし、麻生太郎氏や県内経済界が小川洋氏の支持へ動くなか、蔵内氏は出馬を断念しています。

その約5か月後、蔵内氏は代表発起人の一人として「九州の自立を考える会」を設立し、初代会長に就任しました。

知事選への出馬断念と会の設立に、直接的な因果関係があることを示す資料はありません。

それでも、知事候補への道を断たれた年に、蔵内氏が県議会、市町村、経済界を横断する組織の会長になったという時系列は重要です。

知事として県政の頂点に立つのではなく、県議会、市町村、経済界を結ぶ組織を通じて影響力を広げる道が生まれたとも見ることができます。

2011年知事選後、麻生太郎氏との関係や蔵内氏の力がどのように変化したのかについては、別記事で詳しく整理しています。

関連記事:麻生太郎と蔵内勇夫の関係はどう変わったのか

活動の中心はワンヘルスへ

発足時の主要テーマは、地方分権や道州制、九州の成長戦略でした。

その後、会の活動には、日田彦山線の復旧、観光振興、洋上風力発電などが加わり、近年はワンヘルスが重要なテーマとなっています。

ワンヘルスは、人、動物、環境の健康を一体として考える考え方です。

蔵内氏は日本獣医師会会長などを務め、国内外でワンヘルスを推進してきました。「九州の自立を考える会」も、ワンヘルス条例の制定要望、県民講座、セミナーなどを行っています。

2021年の総会で蔵内氏は、知事と同会がワンヘルスを推進していると述べ、条例制定や服部県政による政策の前進を同会の活動として説明しています。

2023年には、ワンヘルスセンターについて、同会が長年取り組んできた地方分権の成果だと位置づけ、今後も重点事項として取り組むと表明しました。

設立時からワンヘルスを目的とした団体ではありません。

しかし、活動の重点が、蔵内氏が長年推進してきた政策へ移っていったことは確認できます。

蔵内勇夫氏が関わっているワンヘルス関連団体は他にも多数あります。詳しくは別記事で整理しています。

関連記事:蔵内勇夫氏とワンヘルス関連団体

県議会の役職は替わっても会長は替わらなかった

福岡県議会の正副議長や会派の役職は、議員間の調整によって交代していきます。

一方、「九州の自立を考える会」では、役員の任期が1年と定められているにもかかわらず、蔵内氏が2011年から2025年まで約14年間、会長を務め続けました。

そして2025年、蔵内氏は組織を離れず、名誉会長へ就任しました。

原口氏は会長となりましたが、現在の会長あいさつでも、蔵内名誉会長から受けた助言をもとに活動を進めると述べています。

県議会の表側で役職が入れ替わっても、この会では長年、蔵内氏を中心とする体制が続いてきたことになります。

蔵内勇夫の力が見える組織

「九州の自立を考える会」は、地方分権や九州の成長戦略を研究する政策団体です。

しかし、公開資料をたどると、それだけでは説明しきれない組織の広がりが見えてきます。

蔵内氏は代表発起人の一人として設立に関わり、約14年間会長を務めました。

福岡県議会では、かつて全議員が会員とされました。

現在も複数会派の県議、市町村長、企業、業界団体が参加し、服部知事も県政への協力に謝意を示しています。

さらに、活動の中心には、蔵内氏が強く推進してきたワンヘルスが置かれるようになりました。

こうした事実を並べると、この会が、蔵内氏を中心に県議会、市町村、経済界を結びつけ、蔵内氏の政策を広げる役割を果たしてきた組織であることは否定しにくいでしょう。

関連記事:蔵内勇夫とは何者なのか

まとめ|蔵内勇夫が県議を退いた後に何が残るのか

「九州の自立を考える会」を見ると、蔵内勇夫氏の力が、県議会議長や自民党県議団の役職だけから生まれたものではないことが分かります。

県議会のほぼ全議員、市町村長、企業、業界団体を同じ組織に集め、知事とも政策面で接点を持つ。

その中心で、蔵内氏は約14年間会長を務め、現在も名誉会長として残っています。

原口剣生氏は副会長から会長へ移り、中尾正幸氏も理事兼会計責任者として組織に関わっています。

今後注目すべきなのは、蔵内氏が福岡県議を退いた後、この会がどう変わるのかです。

原口氏を中心に現在の体制が維持されるのか。

会員や活動テーマが変化するのか。

それを見れば、「九州の自立を考える会」が蔵内氏個人の力に支えられてきた組織なのか、それとも蔵内氏を離れて福岡県政に定着した組織なのかが、よりはっきりするでしょう。

知事として県政を率いる道を断たれた後、蔵内氏は、知事の外側から県政を結ぶ組織を築いたとも考えられます。

現在、会長職は原口剣生氏へ引き継がれています。

議長ポストを巡る金銭授受問題で音声データの渦中にある中尾正幸氏も、会計責任者として組織に残っています。

久留米市・うきは市選挙区では、現職県議5人全員が会員となり、筑後地域では12市町すべての首長が参加しています。

この団体は、単なる政策研究会ではありません。

「九州の自立を考える会」は、福岡県政に存在する権力構造を読み解く手がかりでもあるのです。

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