久留米市内の住宅のポストに、「歎異抄(たんにしょう)に学ぶ」と書かれた公開講座のチラシが投函されていました。
「これからを明るく生きるために」という言葉が添えられ、人生の目的や幸せ、不安、運命などについて学ぶという内容です。
会場は久留米市野中町の石橋文化会館。チラシには講師として中村和也氏が紹介されています。
一見すると、古典を通して人生について考える一般向けの講座です。
ところが、講師の経歴や関連する団体について調べると、富山県に本部を置く宗教法人「浄土真宗親鸞会」との関係が確認できました。
また、全国各地では異なる名称の講座やイベントが開催され、参加者に別の講座を案内した事例も報じられています。
今回のチラシは、どのような団体と関係しているのでしょうか。
公開されている資料をもとに調べました。
久留米のポストに投函された「歎異抄に学ぶ」のチラシ
今回確認したチラシには、次の開催情報が記されていました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 講座名 | 「歎異抄」に学ぶ |
| 開催日 | 2026年10月2日(金)、13日(火) |
| 開催時間 | 両日とも10時~12時 |
| 会場 | 石橋文化会館2階研修室 |
| 所在地 | 久留米市野中町1015 |
| 講師 | 中村和也氏 |
※いずれも開催済みの日程です。
チラシには「毎回違うテーマでのお話です」とも記載されています。
講座で取り上げる内容
講座のテーマとして、次のような問いが並んでいました。
- 生きる目的とは?
- 苦しみ、悩み、不安の原因は?
- なぜ人命は大切なのか?
- 本当の供養とは?
- 運命は何によって決まるのか?
- AIで幸せになれるのか?
- 正信偈には何が書かれてあるの?
また、参加した人の声として、70代男性と60代女性の感想が掲載されています。
来場記念特典として、『歎異抄』が分かる小冊子をプレゼントするという案内もあります。
ここで気になるのが、講座の運営に関係する団体です。
チラシには「浄土真宗学院」という名称が登場しますが、確認できる範囲では「浄土真宗親鸞会」という宗教法人名は記載されていません。
では、浄土真宗学院とはどのような組織なのでしょうか。
講師・中村和也氏と浄土真宗親鸞会の関係
中村和也氏について過去の講座案内を調べると、所属を明記した資料が見つかりました。
2019年8月6日、長崎県佐世保市のアルカスSASEBOで開催された「1からわかる仏教講座」です。
イベント募集サイト「こくちーずプロ」の記録では、中村氏の肩書が「浄土真宗親鸞会講師」と明記されています。
当時の講座でも、生きる理由や運命、幸せ、『歎異抄』などがテーマになっていました。
その後、2024年1月6日に久留米シティプラザで開催された講座では、中村氏の肩書は「浄土真宗学院講師」となっています。
講座の名称は「ブッダの説く『命の価値』とは?」でした。
つまり、同じ講師について、過去には「浄土真宗親鸞会講師」、その後は「浄土真宗学院講師」という肩書が使用されていたことが確認できます。
浄土真宗学院の運営事業者は親鸞会
浄土真宗学院の公式サイトには「特定商取引法に基づく表示」というページがあります。
そこには、役務提供事業者として次の名称が記されています。
浄土真宗親鸞会
所在地は富山県射水市上野1191です。
このことから、中村氏が講師として紹介されている浄土真宗学院と、宗教法人・浄土真宗親鸞会との運営上の関係が確認できます。
ただし、学院と宗教法人の関係があることと、今回の久留米の講座を宗教法人が直接主催していたことは別です。
今回の講座の正式な契約上の主催者については確認できていません。
浄土真宗親鸞会とはどのような団体なのか
浄土真宗親鸞会は、1958年に高森顕徹氏によって設立された宗教団体です。
本部は富山県射水市にあります。
親鸞の教えを広めることを目的とし、全国各地で法話や仏教講座を開催していると説明しています。
浄土真宗本願寺派(西本願寺)や真宗大谷派(東本願寺)とは別の組織です。
親鸞会の公式サイトでも、全国各地で講座を開催するほか、オンライン講座を実施していることが紹介されています。
今回のチラシにある『歎異抄』は、親鸞の言葉や教えを記録したとされる古典で、浄土真宗を理解するうえで重要な書物の一つです。
『歎異抄』を学ぶ講座そのものは、親鸞会に限らず、さまざまな寺院や団体によって開催されています。
そのため、「歎異抄」という言葉だけで特定の宗教法人との関係が分かるわけではありません。
「歎異抄に学ぶ」だけではない|全国各地で異なる講座名
今回の久留米のチラシは「歎異抄に学ぶ」という名称でした。
しかし、全国のイベント情報や取材報道を調べると、親鸞会と関係する講座には、さまざまな名称が使われています。
東京都葛飾区「歎異抄を学ぼう!」
2026年5月、東京都葛飾区では「歎異抄を学ぼう!」と題した講座のチラシが住宅へ配布されました。
会場はテクノプラザかつしか。チラシに記載された主催名は「仏教入門講座」でした。
この事例を取材した「やや日刊カルト新聞」によると、講師には親鸞会所属の松本孝典氏らが案内されていました。
また、取材に対し、松本氏は浄土真宗学院の講座であることを認めたと報じられています。
同紙には、地域住民が集めた14枚のチラシが寄せられたということです。
千葉県市川市「人生の目的」講座
千葉県市川市では、2026年6月13日に、生きる意味をひもとく「人生の目的」講座が開催されました。
主催名は「人生サロンぴーなっつ」。
講師は親鸞会所属の市瀬則之氏でした。
「やや日刊カルト新聞」の記者が実際に参加しており、講座では「人生のむなしさ」や「本当の幸せ」などについて話されたと報じています。
また、会場ではオンライン講座の案内資料などが配布されていました。
神奈川県川崎市「自分らしく明るく生きるための歎異抄入門」
2026年7月には、川崎市宮前区の宮前市民館で「自分らしく明るく生きるための『歎異抄』入門」という無料講座が案内されていました。
主催グループ名は「親鸞聖人に学ぶ会」です。
イベント募集ページでは、講師を「浄土真宗学院認定講師」と紹介しています。
このように、前面に掲げる名称は「歎異抄」「仏教入門」「人生の目的」など、地域や催しによって異なっています。
ただし、こうした講座名は一般的な仏教の勉強会でも使われます。名前が似ているという理由だけで、すべてが親鸞会の活動だと判断することはできません。
久留米でも以前から異なる名称の講座が開催されていた
今回のチラシが久留米で初めての活動だったのでしょうか。
過去のイベント情報を調べると、少なくとも2024年には、今回と同じ中村和也氏が久留米で講座を開いていたことが確認できます。
2024年「おとなの仏教サロンCHIKUZO」
2024年1月6日、久留米シティプラザで開催されたのが「ブッダの説く『命の価値』とは?」という無料講座です。
主催は「おとなの仏教サロンCHIKUZO」。
講師は中村和也氏で、所属は「浄土真宗学院講師」と記載されていました。
当時の案内には、中村氏が福岡県、佐賀県、長崎県を中心に年間250回以上の仏教講演活動をしているというプロフィールも掲載されています。
2025年には親鸞のアニメ映画上映会も
2025年11月21日と22日には、久留米シティプラザの4階Cボックスで、アニメ映画『親鸞~人生の目的』の上映会が開催されました。
久留米シティプラザの公式イベント情報には、主催「チューリップ企画」、共催「おとなの仏教サロン」と記載されています。
入場料金は当日券1,000円でした。
このように久留米でも、公開講座や映画上映会など、複数の形式の催しが行われてきたことが確認できます。
ただし、これらの催しがすべて同じ主催者によって運営されていたかどうかは、公開情報だけでは確定できません。
講座に参加すると、その後はどのような案内があるのか
今回の久留米の講座はすでに終了しており、参加者に対して実際にどのような案内が行われたのかは確認できていません。
一方、他地域では、取材記者が公開講座や上映会に参加し、その後の案内について報じた事例があります。
東京都杉並区では別の有料イベントを案内
2025年5月29日、東京都杉並区の区立勤労福祉会館で「歎異抄に学ぶ会」がアニメ上映会を開催しました。
「やや日刊カルト新聞」の取材によると、上映途中の休憩時間には「歎異抄万博」という別イベントの宣伝が行われました。
同イベントの一般入場料は3,000円でした。
さらに上映終了後、スタッフから直接声をかけられ、参加を勧められたほか、宣伝冊子と申込書を渡されたと報じています。
千葉県市川市ではオンライン講座を案内
2026年6月の市川市の事例では、講座参加者の机に「オンライン仏教アカデミー」の案内資料が置かれていました。
取材記事によると、講師は具体的な内容を別のオンライン講座で学ぶよう勧めたといいます。
また、講座終了後には約10分間、スタッフと参加者がカードを使って交流する時間が設けられていました。
これらは、実際に会場を取材した記者による報告です。
少なくとも他地域では、初回の講座や上映会だけで完結せず、別の講座やイベントに参加者を案内した事例があることが分かります。
ただし、今回の久留米の講座でも同じ案内が行われたという意味ではありません。
また、これらの取材報道だけで、参加者が最終的に宗教法人へ入会したかどうかまで確認できるわけではありません。
石橋文化会館で開催されたことと、施設側の関係は別
今回の講座は、久留米市野中町にある石橋文化会館の研修室を会場としていました。
ただし、公共性のある文化施設を会場に利用していることと、その施設の運営者が講座を主催・後援していることは別です。
宗教団体が施設を利用すること自体が、直ちに問題になるわけでもありません。
今回のチラシから、石橋文化会館の運営者が親鸞会の活動を後援していたという事実は確認できません。
会場の名称と、実際に講座を企画・運営している団体は分けて考える必要があります。
まとめ|ポストに届いた公開講座のチラシから分かったこと
久留米市内の住宅に投函された「歎異抄に学ぶ」という公開講座のチラシ。
講師の中村和也氏について調べたところ、2019年の講座案内には「浄土真宗親鸞会講師」と記載されていました。
その後は「浄土真宗学院講師」という肩書が使われており、同学院の公式サイトでは宗教法人・浄土真宗親鸞会が役務提供事業者として明記されています。
また、久留米では以前から「おとなの仏教サロンCHIKUZO」の講座や、親鸞を題材にした映画上映会が開催されていました。
全国では「仏教入門講座」「人生の目的」などの異なる名称も確認でき、他地域では公開講座から別の講座や有料イベントへ案内していた事例が報じられています。
一方で、今回の久留米の講座について、実際に入会勧誘が行われたかどうかは確認できていません。
『歎異抄』を学ぶ講座は、さまざまな寺院や団体によって開催されています。
講座の名称だけで運営団体を判断するのではなく、講師の所属や主催者の情報を確認することで、その背景を知ることができます。
今回の記事は、久留米に配布された実物のチラシと、公開されているイベント情報、宗教法人の公表資料、各地の取材報道をもとにまとめたものです。

