久留米ジャーナル編集部

連載小説

第十話 終わりの予兆

←第九話あの日から二人は、驚くほど自然に続いていた。週に一度は会い、会えない日はメッセージを交わした。夜を越え、朝を並び、ひと月も続いている。(自分は特別だ)そう口には出さないが、胸の奥で何度も確認していた。だが、変化はいつも静かだ。最初は...
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第九話 光の中の二人

←第八話鳥類センターの入り口は、家族連れでゆるく賑わっている。ベビーカー。小さな子ども。鳥の羽音。真依は笑う。「平和だね」その横顔を見ながら、男は思う。昨夜の彼女も真依だった。今、太陽の下で笑っている彼女も真依だ。どちらも嘘ではない。池の水...
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第八話 並んだままの朝

←第七話目が覚めたとき、部屋の空気は思いのほか穏やかで、拍子抜けするほどだった。隣で、真依が眠っている。カーテンの隙間から光がもれる。白いシーツに、淡い線を引く。真依がゆっくり目を開ける。一瞬、ここがどこなのか探す顔。そして思い出す。「あ…...
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第七話 越えた夜の静けさ

←第六話六ツ門商店街から通りを一本入ると、人影はまばらになった。自動販売機の光が、二人の影を長く伸ばす。入口の前で、一瞬だけ足が止まったが、もうどちらも引き返す理由を探さなかった。パネルの前で部屋を選ぶ。エレベーターの中で、二人は小さく息を...
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第六話 越える前の夜

←第五話「今日は店の出勤がないんだよね」真依が、そう言った。それ以上の説明はなかったが、男はその一言で十分だった。だから、急ぐ理由もなかった。帰らなければならない理由も、引き止める口実も、必要なかった。西鉄久留米駅で待ち合わせて、いつもより...
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第五話 恋じゃないと言う理由が、もうなかった

←第四話会う回数が、はっきり増えた。仕事が終わったあとに少しだけ。昼だったり、夕方だったり、夜の手前だったり。長くはいられない時間ばかりだった。真依は、いつも時計を見る。「このあと、店なんで」と言って、それ以上は説明しない。会う理由は、いつ...
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第四話 名前のつかない午後

偶然目にしたポスターをきっかけに、久留米市美術館へ向かう二人。何も起きないまま過ぎた午後は、デートとも違う名前のつかない時間だった。境界線の位置が曖昧になる第四話。
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第三話 バーカウンター1枚分の距離

文化街で出会った二人は、夜を避け、昼の久留米で言葉だけを重ねていく。会いたいと言えない男と「少しなら」と応じる真依。バーカウンター1枚分の距離が、関係を静かに変えていく第三話。
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第二話 普通の場所で、普通に会っただけなのに

夜の店を出て、久留米の街で普通に会っただけ。それなのに関係は特別に見えてしまう。役割を失った男と女が感じる距離と期待を描く連載小説・第2話。
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第一話 文化街からはじまる恋もある

久留米の文化街、ガールズバーで始まるのは恋か、それとも勘違いか。飲みに行く男の期待と、働く女の現実が交差する連載小説・第一話。