久留米の文化街を歩くと、夜の空気には独特の匂いがある。
ネオンの光、店の扉が開く音、客を呼ぶ声。
酔った人たちが行き交い、タクシーが止まり、夜は動き続けている。
そんな街の片隅で、白骨化した遺体が見つかったというニュースを読んだ。
場所は文化街の外れにある日吉町の雑居ビル。
長く使われていなかった階のエレベーターホールで、遺体は発見されたという。
死後4〜5年ほど経っていた可能性があるとも報じられている。
ビルは、特別な場所には見えなかった。
久留米にありそうな、ごく普通の雑居ビルだった。
だからこそ、そこに流れていた時間を想像すると、少し不思議な気持ちになる。
文化街で、誰にも知られない静かな時間が流れていたことに。
文化街という場所は、いろんな人が集まる街だ。
飲みに来る人もいれば、働く人もいる。
長くこの街にいる人もいれば、たまたまその夜だけ立ち寄る人もいる。
ニュースによると、DNA鑑定などの結果、遺体は50代前半の男性だったことが判明したという。
だが、なぜそこにいたのか。
何があったのか。
それはわからない。
ここからは想像するしかない。
ただ、文化街という街を知っている人なら、「そういうことがあってもおかしくない」と感じるかもしれない。
驚きよりも、どこか静かな納得のようなものを感じてしまう、そんな空気がこの街にはある。
この街には、いろんな人生が流れ込んでくる。
夜の街は華やかに見えることもあるが、その裏側には、言葉にならない時間も積み重なっている。
彼もまた文化街の伝説・ミチコのように、この街をさまよい続けるのだろうか。
理由はわからない。
だが、誰かが、街の片隅で遺体となって発見された。
それでも文化街のネオンは、何事もなかったかのように、今夜も変わらず灯っている。
久留米の文化街には、いろんな夜がある。
▶ 文化街の夜を描いた記事はこちら

